第58回 西京区樫原ですすむ葬儀場建設問題

連載第58回
西京区樫原ですすむ葬儀場建設問題

『ねっとわーく京都』2009年4月号掲載

古川 拓(弁護士)

 西京区樫原に、葬儀社である株式会社日本セレモニー(以下「本件葬儀社」という)が葬儀場(以下「本件葬儀場」という)を建設すべく動いており、これに反対する地域住民の運動が活発化している。市民ウォッチャー自体による取り組みではないが、建築確認審査に関わる行政のあり方を考察する一例となることから、以下、これをめぐる経緯の概要を報告・紹介するとともに、これが包摂する諸問題について考察したい。

■これまでの経緯と現在の状況について
 旧来、葬儀は各家庭でおこなわれることが多く、葬儀場でなされる場合も、火葬場付近などに配置されることが多かった。しかし、バブル期以降の不動産流動化に伴い、住宅地周辺において葬儀場建設計画がなされるケースが目立っている。地域住民による反対を受けることとなっている。

 樫原においても、約4年前から、某信金の支店のあった土地建物を本件葬儀社が買収し転用する葬儀場建設が計画されたことから、「樫原の環境を守る会」を中心に地元樫原の自治会連合会を含む広範な住民が根強い反対運動をおこなってきた。住民運動は、左京区下鴨のセレマ葬祭場建設反対運動などと連絡を取りながら学びつつなされ、これまで葬儀場建設計画を進行させないできた。

 しかし、2008年、本件葬儀社が本件葬儀場の建築確認申請をおこなったことに対し、京都市建築審査課は同年12月17日付で建築確認処分をおこなったことから、本件葬儀社は、2009年2月中旬から、工事器材の搬入を開始するなどして着工に向けた動きを現実に開始している。

■本件葬儀場をめぐる法的問題点
 まず、そもそも葬儀場は、建築基準法上「集会所」としての扱いを受けるのみであり、火葬場などと比しても緩やかな制限しか受けない。

 この点、裁判所が、葬儀場が周辺住民にとって常に心理的緊張と強い精神的負担を強い、精神的平穏を侵害する強い攻撃的施設である旨判示した(京都地裁2009年9月16日)ことからしても、地域住民の平穏な生活に配慮すべき何らかの別途の法的規制がなされる必要があると言えよう。

 次に、本件葬儀場は、建築基準法及び市建築基準条例上、様々な問題点を抱えている。すなわち構造耐力の問題および周長問題である。

(1)構造耐力(耐震)問題
 本件葬儀場は、いわゆる指定確認検査機関によって構造安全性が検査されたことを以て構造耐力上問題ないとされ、建築確認処分がなされている。この点、京都市は住民に対する説明文書において、本件葬儀場が、構造耐力の保持のための適合判定を要求する建築基準法20条の緩和規定である同86条の7第1項に該当するから問題ないとしている。しかし、本件葬儀場は、既存建築物の基礎部分が増築計画の基礎部分と重なることなど、市がその確認処分の根拠とする指定確認検査機関のなした調査が不十分である可能性が大きいにもかかわらず、その点が全く明らかでない点に大きな問題がある。また、そもそも審査の結果、前述の緩和規定に該当しなければ、さらに国の指定する機関である指定構造計算適合性判定機関による審査を受ける必要が生じてくる。

 この点は、いわゆる「姉歯問題」でクローズアップされた耐震偽装問題と同じ問題を包摂していると言えよう。すなわち、一連の規制緩和政策によって、建築確認申請の際の検査機関を、営利企業である民間株式会社の指定確認検査機関に委ねてしまった結果、当該機関が審査を甘くする「営業努力」をする構造的危険が生じていること、及び検査の内容・適否に関する情報が市民・国民の目にさらされず、その適正さを市民の視点から担保することが困難になっていることなど、規制緩和・民活路線による構造的弊害が、本件葬儀場問題においても背景となっていると言えよう。

(2)周長問題
 続いて、周長問題(同条例17条、14条1項)である。同条項によれば、本件葬儀場は、建築物の敷地の周長の5分の1が道路に接している必要があるが、本件葬儀場の底地となっている敷地はこの基準を満たしていない。

 この点につき、本件葬儀社は、建築物の敷地の一部を図面上敷地から除外して(具体的には敷地北側の土地の一部をいわゆる「死に地」として)、周長の5分の1が接道しているとして確認申請をおこなっている。しかし、このようなやり方、災害時等の安全確保の観点から設けられている周長・接道要件を潜脱するものであって到底許されるべきでない。

■建築審査会に対する審査請求
 住民は、上記問題を指摘・追及し、京都市が自ら上記建築確認につき再審査をなすよう再三申し入れるとともに、本年2月19日、本件建築確認処分の違法性を争うべく、市建築審査会宛に、審査請求申立をおこなった。

 今後、建築審査会における審理のみならず、本件葬儀社や施工業者に対する申し入れなど住民のたたかいは続いていくものと思われる。その過程の中で、単に葬儀場の建設の是非を問うにとどまらず、前述した規制緩和・民活路線が生んだ構造的問題を明らかにするたたかいでもあることを重ねて強調したい。(審査請求弁護団は中島晃、塩見卓也、脇田喜智夫、筆者)。

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