連載第59回
教育委員会の処分は適正か
『ねっとわーく京都』2009年6月号掲載
井関 佳法(弁護士)
「ねっとわーく京都」誌上(4月号)で、教育委員会の処分について話題になっている。タクシーチケットには甘すぎる処分がなされ、酒気帯び運転には厳しすぎる処分がなされているというものである。
私は、3月30日、京都市教育委員会から、平成15年以降の京都市教育委員会の教職員等に係る懲戒処分等の一覧を任意提供を受けた。全部で89件の処分概要を一覧表にまとめてもらったものである。分量があってそのまま掲載できないため、特徴を指摘する。
まず、処分件数が年によって大きく変動している。処分件数は、全部で89件、平成15年処分は5件、平成16年1件、平成17年5件、平成18年4件、平成19年30件、平成20年33件、平成21年11件であった。世論に押されて、必要な処分が下されるようになった結果かどうか、吟味が必要である。
「処分」は、地方公務員法上の懲戒処分とそれ以外の処分に分けられる。教育委員会の処分の多くは懲戒処分以外の処分であり、懲戒処分は少ない。懲戒処分以外の処分が、手続き的にも内容的にも安易に出されてはいないか、チェックが必要である。処分件数は89件であるが、うち懲戒処分14件、懲戒処分以外の処分が75件である。平成18及び19年は、処分件数が30件を越えているが、懲戒処分の割合はそれ以前よりも格段に低くなっている(平成19年は30件中6件、20年33件中1件、21年11件中1件である)。
被処分者は、一般教職員と事務局職員に分けられるが、事務局職員に対する処分が甘い傾向が見られる。事務局職員が処分を受けた理由は、(1)同和温泉旅館事件の監督責任、(2)市民美化センター手数料横領事件の監督責任、(3)喪休不正取得事件の監督責任、そして(4)タクシーチケット不正使用の4種類である。
(1)(2)(3)は監督責任である。しかし、監督責任という言葉のイメージにとらわれては誤ることになる。同和温泉旅館事件では架空や水増し請求を市の職員が行っていたこと、温泉旅館に市職員が同行していたことが明らかになっている。(4)は事務局職員自身が手を染めた不正行為である。しかし、誰ひとり、懲戒処分を受けていない。これは、喪休不正取得や同和温泉学習会事件の処分と比較してもあまりに軽きに失するとの批判を免れない。市長を輩出した職場であるからこそ、処分は一層厳正に下されなければならないはずである。
もう一点目立つのは、酒気帯び運転に対する懲戒処分が異様に重たいことである。この5年間に懲戒免職になったケースは全部で3件、1件目は「自家用車の購入にあたり、詐欺行為を行い、逮捕された」ケース、2件目は「派遣型ファッションヘルスを利用し、未成年者と知りながら現金を渡してわいせつな行為を行った」ケース、そして3件目が「休日の部活指導の後、昼食時にビールを飲み、車で自宅へ帰る途中、酒気帯び運転で検挙された」ケースである。
懲戒処分となった他の2件と同じ程度に非違の程度が著しいとは思えない。交通事故で処分を受けているのが31件ある。一番重たいのが減給(1月)であるが、「学校敷地内で児童と接触した」ケースである。それ以外の30件は、全て懲戒処分でない処分である。懲戒処分でない処分は、処分の主体(教育委員会、教育長等)、処分の種類(厳重文書戒告、文書戒告、口頭戒告等)などによって細かくランク分けができるようであるが、懲戒処分でない処分のうち25件は、その最も軽い教職員人事課長口頭注意に過ぎない。実際に事故を起こした者のこうした処分と比較して、酒気帯び運転を懲戒免職とすることは、あまりにバランスを失するものである。
ちなみに、お隣の大阪府では、酒気帯びの懲戒免職に人事委員会で停職処分への修正裁決が出されている。兵庫県や三重県、福岡県でも取消判決が下されている。この問題は、司法機関ではすでに決着がつきつつある問題である。今年になって下された酒気帯び運転への懲戒免職は、その見識を問われることとなる。
処分が適正になされることは、教職員が意欲的に職務を遂行する上でも、また保護者や市民の学校への信頼確保のためにも必要なことである。