連載第55回
広がる市民ウォッチャーの活動
『ねっとわーく京都』2009年1月号掲載
奥村 一彦(弁護士)
1 今年(2008年)の8月29日、30日、千葉県の千葉港で開かれた全国市民オンブズマン大会に参加しました。今年のテーマは地方議会の活性化で、現状の議員活動では何が行われているのか、監視をいかにするのか、高額の政務調査費はいったい何に使われているのかなど興味津々でした。500人ほどの人が参加し、各地の活動や成果を報告しあい、ノウハウを身に付ける大変良い機会でした。
全体会と分科会を通じて、個人的に関心が高まったのは、諫早湾のいわゆるギロチンの開門を求める訴訟で勝利した活動とフォレストレンジャーを名乗る森林保護団体の活動でした。昨年、たまたま諫早湾の干拓地を見学しましたが、巨額の資金を投入しながら、干拓地を経営する農家の確保そのものが困難な状況です。堤防内は陸からの川が流れ込み、したがって当然生活排水が流れ込み、汚れていました。また、流れ込む水を堤防の外側の海に捨てなければなりませんので、その費用が年間億単位で必要だとのことで、無駄遣いの典型事業ではないかと言われています。
さて、諫早訴訟で私が感心したのは、行政訴訟で勝利するためには、行政が何をしたのかを知らなければならない、そのためには行政の流れを時系列的に全部再現することだという教訓でした。これを徹底してやると、どこが問題かがはっきりと見えてくるというものです。なるほど、そうだと思いました。普通はあまりお目にかからない条例、規則、規定、要綱などがあり、行政はその行為ごとに根拠を持って活動しているので、その根拠を問い直すのです。
もうひとつは、森林保護の活動で、北海道の襟裳の自然を守る訴訟でした。訴訟だけではなく、森林警備隊ともいうべき活動をしています。襟裳岬は知床より自然が多いというか深いのだそうです。ところが、文字通り山奥で山林業者とつるんだ旧林野庁が、貴重な資源を伐採して売却したり、違法伐採を黙認するなどの行為が横行しているです。その実態は相当ひどく、山が崩壊するような事態も発生しているのだそうです。今は地球温暖化問題で、伐るのではなく植える時代なはずなのに、国の森林行政はひどいものです。
◇
2 全国大会での報告で、これはいける!と思った報告があります。それは、市民オンブズマン活動の地方展開をしている報告です。例えば京都府で言うならば、京都市ではなく南丹市や木津川市などに出掛け、出前講座をやるというものです。情報公開請求や監査請求の仕方を学習し、早速それを実践するという活動です。大会後、「市民ウォッチャー・京都」もその方針を早速取り入れ、これからは京都市以外の自治体の行政監視を強めていくことになりました。乞うご期待。
◇
3 全国大会の成果の一つに行政の契約する随意契約の問題が浮上しつつあるということです。随意契約とは、当初の工事は競争入札しながら、その後、あれが必要だこれが必要だといいながら随意に契約し、終わったときには競争入札の価格の数倍の工事費用になっているという問題です。地下鉄の例があがっていましたが、京都市東西線の1キロメートルあたりの建設費は359億円にも上り、費用対効果には大きな疑問が呈せられていました。これで思い出すのは市原野のごみ焼却場建設問題で、本体以外に溶融炉という附属設備が随意契約で市が契約した額も談合の額に入れて裁判しましたが、裁判所はその部分は随意契約であるとして省いたことです。
しかし、実態は、当初契約さえとれば後は随意契約で拡大できるという手法で、最終的な事業費が膨れ上がるのを防げないということが起こっています。裁判所もようやく注目し始め、随意契約についても本来競争入札すべきであるとの考えを示し始めています。この点で無駄遣いをストップさせる活動が必要になっています。
◇
4 今回は全国大会の報告をしました。実は、これから重要な判決がいくつかでるのですが、現段階ではまだです。でたらまたお目にかかりましょう。