京都市教育委員会の予算の使い方


連載第74回 『ねっとわーく京都』2010年9月号掲載

中野 宏之(京都市教職員組合副委員長)

はじめに

今、学校現場では学校予算の削減がすすみ、子どもの教育、学校運営にも大きな影響が出てきています。その一方で、京都市教育委員会の予算の使い方には大きな疑問の声が上がっています。

1 ますます増える保護者の教育費負担

「格差と貧困」が広がる中で、教育を受ける機会に大きな格差が生まれていることが社会問題となり、この4月から公立高校の授業料の無償化が実現しました。しかし、義務教育無償化が掲げられている小学校・中学校でも、教育費の父母負担が増大しています。表①(注=表は現在準備中です。以下同じ)はある小学校の4年生の学校納入金の一覧です。給食費を含めると年間72,630円(ただし、3月分の給食費は除く)、表②はある中学校の1年生の学校納入金で、生徒会費・PTA会費、修学旅行の積立金を含めると年間52,220円の負担となっています。

この背景には、国の貧困な教育費と市の財政難を理由にした学校運営費などの削減があります。ここ数年の学校運営費の削減で、業者が行うトイレ掃除の回数が減らされたり、小学校の音楽鑑賞が減らされたり、科学センター学習のバス代(890円)も新たに保護者負担となりました。

また、市教委が目玉としてすすめる事業に関わっての保護者の負担増です。表②でも計上されている小中学校をつなぐジョイントプログラム440円、確認プログラム600円は、新たな負担増です。これは、「学力向上」を目的に数年前に市教委が導入した受験産業を活用したテストです。そして、小学校では、従来1泊2日で行われていた山の家の宿泊学習を4泊5日に拡大しました。これによって、小学校4年生の積み立て額が約5千円程度から1万1千円に膨らんでいます。両事業とも学校現場からの要望で始まったものではありません。

2 「財政危機」を言いながら恣意的な支出拡大

○「副読本」より「ジュニア検定テキスト」に公費
市教委は口を開けば「財政難」を言いますが、その一方で、「こんな予算の使い方はどうなんだ」との声があがっています。例えば、表①にある京都市小学校社会科副読本「下巻」390円については、保護者負担にしながら、教育課程には直接関係の無い小学校4年生のジュニア京都検定テキスト(379円+税、総額520万円)はすべて市教委が公費負担し、無料で配布しています。

○自らの礼賛本を大量購入して配布
恣意的な税金投入の最たるものが、2008年2月の京都市長選挙前に、門川氏を礼賛した書籍「教育再生への挑戦―市民の共汗で進める京都市の軌跡」(編集PHP出版)を大量に公費で購入し配布したことです。これにかかった費用は約209万円です。当時、一方的に送りつけられた管理職などは、「何でもありや。こんなことに予算を使うのならもっと学校にお金を回してほしい」と口々に語っていました。

3 緊急の生徒指導にはタクシーチケットがでない?

この4月からの学校敷地内の自動車通勤規制によって、自動車通勤が減らされました。交渉の中で、「緊急の生徒指導などに影響がでる」との組合の指摘に市教委は、「必要な場合はタクシーチケットを使ってもらう」と回答していました。しかし、職場からは「管理職がなかなかタクシーチケットを出してくれない」との声が多く届いています。さらに、京都府を含む予算の削減の中、修学旅行などにおける教職員の拝観料や入場料を自己負担にせざるを得ない状況さえ生まれています。こんなに学校は困っているのに、「市教委幹部はタクシーチケットの不正使用(祇園からの帰宅まで使用)」との新聞報道には、「もっと現場に予算を使って」との多くの教職員の怒りと悲鳴が聞こえてきています。

4 子どもと教育に生きる税金の使い方を!

今、求められていることは教育予算を含めて、税金の使い方を、もっとオープンにし、どう使うことが子どもの教育や学校にとって有効なのか、論議を深めることです。教育予算を大幅に増やすことともに、教育行政の思うままに予算が恣意的に執行されている現状にもメスを入れる必要があります。