連載第83回 『ねっとわーく京都』2011年6月号掲載
豊田 陽(自営業)
増え続ける情報公開請求
オンブズマン活動のもとになるのが情報公開制度。京都市の場合、どれくらい市民に活用されているのか市役所の情報公開コーナーを訪れてみました。
「年間、何件くらい情報公開請求があるのか知りたいんですけど」と尋ねると「その棚に『情報公開制度の運用状況について』(*この一部はインターネット上でも公開されている)というファイルがあります」と窓口の人が教えてくれたので、さっそく目を通してみると…みなさん情報公開請求って、どれくらいの件数があると思いますか?
毎月30件、年間360件くらいかなと思っていたのですが最新の資料(平成21年度版)では何と年間1019件。平成19年度が581件、平成20年度が940件なので年々、情報公開請求の数が増えています。これは京都市に問題があるというよりも情報公開制度がひろく根付いてきたからでしょう。
どんなことが市民から情報公開を求められたのか一覧を眺めると「京都市下鴨中学で平成22年2月に実施された学年末考査、後期期末考査の問題・答案用紙・解答例」なんかもある。これって地元の学習塾が教材用に請求したのかな。
情報公開制度の改善点
さて情報公開制度に関して改善して欲しい点が3つあります。まずひとつめは情報公開コーナーの開いている時間。平日の9時〜17時、ただし12時〜13時までは昼休み。情報公開制度を利用しようとすると、会社勤めの人間は有給休暇を取らないと利用できません。夜間や土・日曜にオープンするのは難しいとしても昼休みはなくして欲しいと思います。門川市長、いかがでしょうか。
二番目の問題点は「文書不存在」。この制度で公開されるのは公文書なので、もとの公文書がなければ、せっかく請求しても「文書不存在」で何もお答えできませんという回答が来ます。市民の感覚では都合の悪いことを隠すためにはじめから文書を作らずに仕事をしているのではないかと思うこともあります。うがった見方かもしれませんが情報公開制度があるが故に、後日、市民から情報公開請求されることを予見して、本来なら作成し記録しておかなければならない文書をつくっていないのではないかという気がすることも…。特に情報公開請求後の処理状況の統計を見ると、教育委員会の「文書不存在」が21件と際立っています(*その次が建設局の15件)。
また情報公開制度の問題点の3つめは「取り下げ」の問題。以前、こんなことがありました。門川市長ご自慢の、京都市の一部の小学校は北欧・フィンランド式の教育スタイルも取り入れているそうなので、その小学校とフィンランドの小学校の教員の残業時間や残業代を比べてみようと(*フィンランドやオランダの教員はほとんど残業しない)情報公開請求しようとすると教育委員会の担当者がすっ飛んで来て「京都市には”残業”という”概念”がありません、残業代も手当に含まれていますので云々」。
せっかく情報公開コーナーの窓口まで足を運んだのに、情報公開請求させずに口頭での説明で済まそうとする姿勢がありあり。たしかに情報公開請求されたら余計な仕事が増えるのはわかりますが…そのあたりはなんとかして欲しいと思います。
情報公開制度の意義とは
たしかに情報公開制度は京都市で働く職員にとって作業量や精神的な負担が増える面倒な制度だと思いますが、これからも情報公開に向けてできるだけ努力してもらいたいと思います。最後にあまり目にすることがないと思いますので京都市情報公開条例の附則を転記しておきます。
「本市が保有する情報は、広く市民に公開され、適正に活用されることにより、市民生活の向上と豊かな地域社会の形成に役立てられるべきものである。また、この情報の公開は、市政に対する理解と信頼を深めるとともに、市民参加を促進し、もって開かれた公正な市政の推進に資するものと確信する。このような精神の下に、市民の基本的人権を最大限に守りつつ、公文書の公開を請求する権利を明らかにすることにより市民の知る権利を具体化し、併せて市政に関する情報を積極的に提供することが、市民の福祉の増進と地方自治の健全な発展に不可欠であると認識し、この条例を制定する」