京都市教委問題シンポ、開かれる


連載第85回 『ねっとわーく京都』2011年9月号掲載

井関 佳法(弁護士)

市民ウォッチャー京都は、5月19日、こども未来館で、2011年度の総会を開催しました。1997年に創設されて以来、毎年開催してきたもので、1年間の活動報告とこれから1年間の活動方針、会計報告を採択承認し、人事面では代表には田村和之さん(龍谷大学行政法教授)、事務局長には中村和雄さん(弁護士)が再選出されました。

総会に引き続き、同じ会場でシンポジウム「またしても京都市教委──不正・不祥事はなぜやまないか」を開催しました。これまでも、総会後には毎回講演会を開催してきましたが、今年は初めて、同じ京都で活動しているオンブズマン組織であるオンブズパーソン委員会と共催で企画を持つことになりました。それぞれ活発に行政監視活動を行ってきましたが、門川宣伝本大量配布事件等共同で事件に取り組む経験も踏まえて、それぞれの成果を持ち寄れば、京都の今の問題点がより浮かび上がるのではないかとの問題意識によるものでした。

そして改めてそれぞれが取り組んでいる事件を並べてみると…、京都市教委を相手とする事件が大変多いのです! 一つひとつの施策が問題であるだけでなく、京都市教委が構造的に、あるいは体質的に深刻な問題を抱えているのではないかと考えられました。そこで、上記のとおりのテーマでシンポジウムを開催する運びとなったのです。

教育委員会の性格や役割についても勉強してみることとして、中嶋哲彦さん(名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教育学部の教授、元犬山市教育委員)をお招きして講演して頂きました。

ヒトが人間になるには自由な人格形成を保障する学習が不可欠である。公教育はそのような学習権を充足するものでなければならない。公教育を担うのは学校であり教職員であり、保護者に対しては応答責任がある。学校管理権は、地方公共団体にあり、学校管理事務を行うのが教育委員会であるが、あくまで教育条件整備と限られており、教育内容・方法に関する管理権は限定されている。

中嶋さんは、教育委員会は、自らの分をわきまえて、仕事をすることが必要だとのメッセージを伝えてくださったのではないかと思いました。

中嶋さんの講演を受けて、オンブズパーソン委員会の北上田毅さんからと、市民ウォッチャーの中村和雄さんから、それぞれ活動報告がありました。お二人から報告された京都市教委の不正・不祥事を追及する事件活動は多岐にわたりましたが、その一部を以下に紹介いたします。

□教育基本法「改正」審議の時、小泉・安倍内閣がタウンミーティングを実施しましたが、京都で開催された際、国と京都市教委が不正抽選を行って、反対意見を述べそうな応募者を排除したことの責任を追及するタウンミーティング不正国賠訴訟(勝訴確定)

□京都市教委が学校の教室改装工事などについて、本来必要な競争入札を回避するため書類上工事を分割し、特定の業者に受注させたことの責任を追及している分割発注住民訴訟

□京都市教委が毎年お気に入りの教員約500名に、パイオニア研究事業を委託したとして各5〜15万円(2001年からの5年間で総額1億3000万円の支出になる)を渡してきた、露骨な教員分断政策の違法を追及するパイオニア委託研究事業住民訴訟(勝訴確定)

□京都市教委の幹部職員らが、祇園等で飲食の後、公用タクシーチケットで帰宅していた上、タクシーチケットの半券には「乗車地・市役所」と虚偽記載してきたことの責任を追及するタクシーチケット不正使用訴訟(全額返金を実現)

□貸与制の同和奨学金について、所得がどんなに高額であっても、返還金の全額を京都市が肩代わりして支払ってきた自立促進援助金の違法性について追及する同和奨学金住民訴訟(一部勝訴、制度廃止実現)

□京都市教委は、前回市長選の直前に、門川の写真入りインタビュー記事が掲載され、門川が選挙の際宣伝した政策や実績をそのまま載せた、文字通り門川宣伝本を1400冊も公費で購入し無償で配布したことの責任を追及する門川宣伝本大量配布事件、等々。

そして、これらの不正・不祥事が、いずれも門川現市長と桝本前市長とが、市長あるいは教育委員会幹部として関与して発生していることに、驚かされました。この報告をじっと聴いておかれた中嶋さんは、「びっくりしている、衝撃を受けている」との感想を述べられました。京都市教委の不正・不祥事は、全国的にも際だっていると言うことだと思います。

このシンポジウムは、会場一杯の100名以上の市民の皆さんにご参加頂いたうえ、上記のとおり内容的にも意義あるものとなりましたので、パンフレットにして広く市民の方々にお知らせすることとなりました。パンフレット(注)も是非ご活用下さい。

(注)パンフレットご希望の方は、こちらのページより、送り先、部数などを明記してお申し込みください。また、当サイトからもPDFファイルでダウンロードできます。