第23回全国市民オンブズマン香川大会に参加して


連載第143回 『ねっとわーく京都』2016年12月号掲載

山内 義明

私は、城陽久御山民主商工会の事務局に35年勤務し、今年6月末に退職をしました。

その活動の中で、平成18年情報公開を宇治税務署の捜査費(おとり調査費)に対して行いました。美容室に税務調査に訪問する前の3週間前に宇治税務署員の職員がその美容室に髪のカットに来店し、営業状態を聞き取り、おとり調査を行ったのです。

4200円のカット代は、捜査費。美容室の支払いは、税務署。宇治税務署に対して行政文書開示請求を行いましたが、捜査費の重要なところは黒塗りでした。一部明らかになったのは、平成18年度では全国で5億111万円が捜査費として使われていることです。違法なことを追及するために情報公開は必要と考え、今回の全国市民オンブズマン香川大会に参加しました。

政務活動費は、地方議員の調査研究活動のため、議員報酬とは別に自治体が公費で負担する経費です。2012年の地方自治法改正で政務調査費から使途が拡大され名称が変わり、使途は自治体の条例で定めることになっています。

法改正時衆議院総務委員会の審議の中で川端達夫総務相(当時)が「公費であり(使途の)透明化が非常に大事だ」答弁していますが、現実は、富山市議会等の報道をみても不正取得が相次いでいます。

政務活動費の現状と京都は全国から見て情報公開が進んでいるのか、これからの情報公開についてどうあるべきかを学習したいと思い、第23回全国市民オンブズマン香川大会に参加しました。

大会は2016年9月24、25日の2日間にわたって香川県高松市で行われました。

大会のキャッチコピーは「ふぅがわるいで 政務活動費!」。「ふぅがわるい」というのは、香川では「はずかしい」「かっこ悪い」意味だそうです。政務活動費の問題を中心に私たちの生活を取り巻く身近な問題の中から「政治とカネ」のあり方を考える大会です。

第1日目は、政務活動費のアンケート結果と実態、各地域での情報公開の運動紹介・結果、裁判についての報告。2日目は、政務活動費分科会など5つの分科会が行われ、最後に大会宣言が決議されました。

市民オンブズマンが、1995年に官官接待を問題として以来、自治体の違法支出や税金の無駄遣いをテーマとするたびに、議会の行政監視能力が機能不全に陥っていることが立証されてきました。加えて、政務活動費の支給、実績、意見交換会の実情が、税金の無駄遣いと今や日常的になっています。

全国市民オンブズマン連絡会議は、政務活動費アンケート調査を議会事務局に対して行い、そのまとめが報告されました。その一部を紹介します。

【政務活動費の総額執行率】
総額の執行率は、調査した全体額では 3・4%減となり、支給総額は、2014年度は約190・3 億円、昨年度は約190・7億円であったが、返還額は約6億4千万円増えている。執行率が 1%以上減少した議会は、比較調査した112議会の内78議会が減少(昨年57)している。

特に、10%以上の減少は、兵庫県 10・4%、堺市12・9%、神戸市10・7%、広島市 12・6%など12議会となっている。政務活動費の不祥事が報道された兵庫県は、2013年度は87・8%だったものが、2015年度は66・4%に大きく減少している。京都府の執行率は92・0%、京都市80・0%。

【議員1人当たりの政務調査費交付年額(平成28年度)】
500万円を超えるのは10都道府県議会、5政令市議会。都道府県の上位は東京都720万円、大阪府708万円、京都府648万円。全都道府県の平均は421万円。政令市の上位は横浜市660万円、京都市648万円、大阪市615・6万円。政令市の平均396・5万円。

【領収書】
領収書添付に際し、非公開部分をあらかじめ議員(会派)が黒塗りにして写しを提出しているは、愛知県、和歌山県、岡山市の3議会。支払い先が個人の場合の領収書の氏名の公開について、「公開」は都道府県0、政令市1、中核市11。「一部公開」は都道府県14、政令市11、中核市14。「非公開」は都道府県33、政令市8、中核市20であった。京都府は非公開、京都市は一部公開。

兵庫県議の有罪判決の記憶も新しい中で、富山市議会で判明した組織的な、政務活動費の不正支出は、富山市の制度固有の欠陥によるものでなく、同様の事態は、全国で起こりうることが明らかになりました。

情報公開制度全般についてみれば、共謀罪の立法過程情報は、すべて不開示とされるなど、本来、当然開示されるべき情報も個人情報を口実に隠される事態が起こっています。その一方で、富山市議会をはじめとする多くの議会で情報公開請求者の氏名を議員に伝えていたこと。また、大分県警が労働組合等の敷地に無断で立ち入り、監視カメラを設置していた事件も発覚しました。

地方議員の政務調査費は、本来、政策の調査・研究が目的です。不正、再発防止には、政務調査費の収支報告書の全面公開・領収書をホームページに公開、領収書と引き換えに必要額の支払い(後払い)などの厳しいチェックと外部の監視が欠かせません。これまで以上に公権力による住民監視をはじめ、行政、議会をチェックし、民主主義に不可欠な知る権利を強め、住民自治の前進と地方議会の改革を進めましょう。