京都市長選挙をふり返って──願い実現にむけて、今から運動を!


連載第136回 『ねっとわーく京都』2016年4月号掲載

中野 宏之(京都市教職員組合)

2016年2月7日投票で行われた京都市長選挙では、現職の門川大作さんが3選を果たしました。市教組は、「憲法市政未来ネット」に結集し、元委員長の本田久美子さんの当選にむけて奮闘しました。結果は厳しいものとなりましたが、次につなげるためにもあらゆる角度からの総括が必要だと考えています。

その中で注目したいのは、投票基準で、「福祉・子育て政策」を重視すると応えた人については、本田さん(56.5%)が、門川さん(40.8%)を唯一上回りました(京都新聞出口調査)。これは、本田さんの候補者としての魅力と政策、運動の一定の反映だと考えられます。マスコミの紙面や候補者討論会でも、「子育て・福祉」の問題は争点の一つとして取り上げられました。そして、最大の理由は、実際に子育てや教育、介護などで困っている市民、強い要求をもっている市民が多かったことの反映だと考えられます。

その一方で、門川市政を評価する市民が6割〜7割程度あったことがいくつかのマスコミの調査で明らかにされています。これは、全体として市政の問題点が市民に伝わっていないことの現れであり、今回の得票にも直結していると感じます。教育の分野でも、何となく「門川さんはよくやっている」との印象を持っている市民は多いと思います。

しかし、門川市政の8年間、教育条件の改善はすすんでいません。現に門川さんのチラシ(未来の京都をつくる会機関紙810号)に掲載された教育分野の実績は、①学校運営協議会を230校に設置、②小中一貫教育を推進、③スクールカウンセラーの全校配置(実際には非常勤、国の補助事業でもある)の三点でした。実際にはあまり予算もかからない、市民や現場からもそれほど歓迎されていない内容でした。

門川市政の8年間で京都市の教育条件は、大きく遅れてきています。とりわけ、全員制の中学校給食、少人数学級の遅れは顕著です。他の政令指定都市では着実にすすんでいます。

門川さんは、KBS京都の討論会で、巨額の予算(少人数学級100億円、中学校給食200億円)がかかることを理由に実施は困難と発言し、公約(133の約束)にも掲げられていません。しかし、実際には35人学級を全学年(小学校3年生から中学校2年生までの6年間)実施しても、30億円あればできます。また、全員制の中学校給食については、京都市(約70校)より規模の大きい大阪市(約130校)が2020年までに、自校方式・親子(近くの小学校から運ぶ)方式で、4年間で130億円(年30数億)で実施すると表明しています。やる気があればできることです。

また、現職陣営の行政機構を使った圧倒的な宣伝にはほんとうにあきれます。教育委員会が発行する「あしたのために」(2016年1月号)では、門川さんが教育分野の成果として自慢した「全国学力テスト」の結果を特集し、「市民新聞」(同年2月1日号)では、市長選挙の争点となった「子育て支援」「バス路線」で、京都市はいかにがんばっているかということが特集されています。あまりにも露骨です。

これらの宣伝を乗り越えて、ありのままの実態を知らせることには、大変な時間と労力がかかります。選挙直前の取り組みだけでは無理な課題です。四年間しっかり、市民や保護者と結びつき運動を積み上げていくこと、同時に他の政令指定都市との比較、できるかぎりわかりやすい対案を示していく工夫などが求められています。

子どもの貧困問題やそれに伴う学力格差など子どもを取り巻く問題は深刻です。子ども、保護者、市民の願いを一つでも前進させるために、今から運動をすすめましょう。