Xバンドレーダー基地その後


連載第148回 『ねっとわーく京都』2017年5月号掲載

尾崎 彰俊(弁護士)

2014年5月、京丹後岬での米軍基地工事が開始された。その後、同年10月、Xバンドレーダーが搬入され、2年以上が経過した。Xバンドレーダーは、アメリカのミサイル防衛システムの一部をなすもので、敵国から発射された弾道ミサイルを察知することを目的としたものである。

したがって、Xバンドレーダーの設置は、日本国憲法9条が禁止する集団的自衛権行使にあたるものであり絶対に許されない。

2014年以降、自由法曹団京都支部では、毎年、米軍基地調査、地元で反対運動を行っている方との交流、基地対策室への要請行動などを行い、ウオッチャーレポートでもその内容を報告してきた。2017年3月3日にも、現地調査、京丹後市役所への要請行動、地元の方との懇談を行った。以下では、その結果を報告する。

要請行動

京丹後市では、米軍のXバンドレーダー設置に伴い、市民(京丹後市に住所を有する者)に対する安心・安全のために施策の一環として、市民と米軍関係者との間で交通事故等が発生した場合における弁護士相談料などの支援を行う制度を設けている。

同制度は、米軍による交通事故を直接的に防ぐものでないが、交通事故が起きた際の住民の不安の軽減という観点からは、重要な制度であり、全国的にみても先進的取り組みであるといえる。一方で、同制度が、京丹後市民に十分に周知されているとは言えないのが現状である。

そこで、今回の要請行動では、京丹後市の住民に対し、弁護士無料相談制度を広報により周知徹底するとともに、市民から相談が寄せられた場合は、同相談制度の適用の可否にかかわらず、積極的に京都弁護士会あるいは弁護士を紹介・案内するよう制度の拡充を求めた。

交通事故が発生すると、被害者は被害の請求方法はもちろん、米軍関係者にどのように対処したらよいかわからず、泣き寝入りとなることも少なからずある。今後、同様の制度が京都府全体に拡大されることが望まれる。

現地調査・住民との交流会

2013年2月、米軍基地建設が発表されてから4年が経過した。私は、この4年間の間に、再三現地を訪れてきた。

今回、現地を訪れて一番驚いたことは、前回、私が現地を訪れた時と比べ、米軍基地が「要塞化」しているという点である。以前に私が訪れた際には、設置されていなかった、監視カメラが設置されていた。

また、前回訪れた時には、設置されていなかったプレハブのような施設が複数建てられていた。騒音については、改善されておらず、ウォーンという音が常になり続けていた。

米軍基地の拡大は、基地自体が拡大されていることにとどまらない。米軍による福知山射撃訓練場の使用問題がある。この問題は新聞報道でも、取り上げられているが、米軍・軍属が射撃資格を確保するための定期射撃訓練に、福知山射撃訓練場を使用しているのである。米軍基地建設が発表された当初は、福知山射撃訓練場を使用するなどという話は一切出ていなかった。

福知山射撃訓練場を米軍に使用させることは、実質的には、米軍基地の拡大であり、絶対に許されない。

米軍基地を見学した後、現地で反対運動を継続的に行ってこられた方と交流を行った。現地の方からは、この1年間の変化について、報告がなされた。

まず、これまで、米軍基地周辺のお寺から、海を見ることができたが、米軍基地に仮設トイレが設置されたことで、海を見ることができなくなった。この景観問題については、トイレ不使用は決定されたが、トイレの撤去については、未だ実現されておらず、解決していないとのことであった。

さらに、電線の問題があることが報告された。これまで、6600Vしか使用していなかったが、電線工事が行われ、3万3000V用の電線が引かれているとのことであった。従前、発電機の騒音問題対策として、関西電力から電気を引くことを計画しているという説明がなされていた。

しかし、3万3000Vも必要なのかは非常に疑問である。大量の電源を使用する理由は、米軍基地及び航空自衛隊経ヶ岬分屯基地の拡大を計画しているのではないかということが疑われる。

米軍基地計画が発表されてから、4年が経過したが、米軍基地は拡大を続ける一方で、米軍・軍属による交通事故は、判明しているだけでも40件を超えており、住民の安心・安全が確保されているとは到底言えない状態である。

今後も、米軍基地問題について、拡大を許さない、米軍基地撤去を求める運動を継続していきたい。