町民が立ち上がって町長を落選させた──京丹波町マーケス事件


連載第158回 『ねっとわーく京都』2018年4月号掲載

奥村 一彦(弁護士)

京丹波町の町長選挙と町会議員選挙が昨年(2017年)11月5日行われ、我々ウオッチャーで目下取り組んでいる京丹波町マーケス事件─6億700万円の公金を第三セクター丹波地域開発が経営する「丹波マーケス」に投入した事件─が町長選挙の最大争点になり、その是非が問われた結果、投入した寺尾豊爾町長(当時)は落選しました。

立候補者は全部で4名(前回町長選は寺尾氏だけが立候補し無投票)、寺尾氏以外は皆、公金投入問題を選挙の第一の政策課題に据え寺尾氏を批判しました。投票率は74・44パーセントで、公金投入に対する町民の高い関心があったことを裏付けており、町民の怒りが寺尾氏を落選させたと言えます(寺尾氏の得票率は28・8%)。

粘り強い地元原告団の町民運動の結果であり、京丹波町に町民の声が届いたと実感させます。それと同時に、原告団の一人が町会議員となり、京丹波町に新しい風が吹き始めました。今後の活躍が大いに期待されます。

マーケス事件というのは、前町長が、平成27年1月9日、同人が代表をしていた第三セクター丹波地域開発の借入金6億700万円の返済に税金を投入したという事件です。

この第三セクターが経営しているのがマーケスという大規模商業施設ですが、その最大テナントが、前町長が代表者であったサンダイコーというスーパーなのです。町民は、行き着くところ、前町長は自分の会社(サンダイコー)のために税金を投入したのではないかと強く怒っているのです。

それもそのはず、前町長は6億700万円の負債の連帯保証人なのです。

さて、裁判は、原告の町に対する資料の開示請求で攻防戦をしております。

町側は、マーケスは町民のために存在し公共性がある、だから税金投入は正当であると主張していますが、それでは、総務省の指針である、経営者の経営責任を問うことが第一の責任のとりかたで、それでも税金を投入するというのであれば住民に情報を公開し、説得的な議論をしなさいという、その指針に基づき、丹波地域開発の経営資料の公開を求めていますが、今度は企業秘密に該当するので出さないという誠に筋の通らない主張を繰り返しています。

そこで文書提出命令の可否が判断されるところに来ています。

原告が要求しているのは、各テナントの賃料、サンダイコーなど土地所有者に支払っている借地料、丹波地域開発の役員のテナントが支払わなかった未収賃料などです。

要するに経営が行き詰まって税金を使った訳ですから、原告が要求しているのは、それら資料を公開して町民を説得する必要があったはずの文書です。いったいこれがなぜ出せないのか町民は憤っています。

もうひとつの問題としているのは議会での承認プロセスです。

町は、平成26年度9月議会に「丹波地域開発株式会社に対する経営支援」、「追加資料」及び「再追加資料」を提出し、高度化資金返済残高6億700万円を一挙に帳消しにする案を一般会計補正予算(第2号)として議会に提出しました。その採決は同年9月24日ですので、本当にあっというまに採決してしまったのです。

いったいこれが民主主義と言えるのでしょうか。あまりにも強権的な手法であり到底議会の役割を果たしたと言えません。

裁判はいよいよ佳境に入ってきました。よい判決をもらうよう最後まで努力します。