京都水族館の梅小路公園使用料減額に「正義」はあるのか?


連載第103回 『ねっとわーく京都』2013年4月号掲載

大河原 壽貴(弁護士)

京都水族館は、昨年(2012年)3月14日にオープンして以降、順調に来場者数を伸ばしています。当初の計画では初年度の入場者数を200万人と見込んでいましたが、オープンして3ヶ月半あまりで100万人を突破し、昨年11月には年間目標の200万人をすでに突破しています。かく言う私もオープン前から年間パスポートを購入し、この1年間で5回くらいは行きました。すでに次年度の年間パスポートも更新済みです。

しかしながら、これまでウォッチャーレポートでも報告されてきたように、京都水族館の梅小路公園使用料の減額措置については、全く道理がありません。マイケル・サンデル教授風に言えば、「正義」がないのです。京都水族館が、公園使用料を減額する必要がないほど、十分な収益をあげることができていることはもちろんのこと、それだけではなく、公園使用料を減額するルールを潜脱する運用実態があるのです。

梅小路公園の使用料については、京都市は、京都水族館のために「京都市都市公園における教養施設の設置許可に係る使用料の設定に関する要綱」をあえて策定して、使用料を減額しています。

固定資産評価額に基づいて算出される金額が本来の梅小路公園の使用料なのですが、その要綱が適用されると、「教養施設」を理由に70%に減額され、併設施設(商業施設)の部分が3%を超えないことを理由に、さらに80%(あわせて56%)に減額されているのです。

これまでもウオッチャーレポートでは、京都水族館が「教養施設」にあたらないことを中心に報告してきましたが、今回は、「併設施設(商業施設)面積」の点から、京都水族館の梅小路公園使用料の減額に「正義」がないことを報告したいと思います。

当初、オープン前に京都水族館が公表していた内容によれば、「併設施設(商業施設)」にあたる施設は、入口横のミュージアムショップと、海獣ゾーンにある「かいじゅうカフェ」、イルカスタジアムにある「スタジアムカフェ」、山紫水明ゾーンにある「山紫水明カフェ」でした。ところが、実際にオープンしてみると、商業施設部分としては予定されていなかった「交流プラザ」内に、京都のお土産品などの売店が設けられ、海洋堂のフィギュアなどの「ガチャガチャ」、UFOキャッチャー、メダル販売機などが並べられ、イルカスタジアム横にはドリンクやアイスなどを販売する臨時ワゴンが設置されていたのです。

市民ウォッチャー京都では、住民訴訟の中で、オープン後に新設されたり、拡張されたりした部分も含めた「併設施設」面積を明らかにするよう求めました。そうしたところ、京都市が明らかにした「併設施設」面積は、319.13平方メートルでした。この面積は、京都水族館全体の面積10974.29平方メートルの2.9%になります。冒頭で書いたように、京都市が策定した要綱では、「併設施設」の面積が3%以下の場合には使用料を80%に減額できます。京都市が出してきたこの「併設施設」面積の数字は、実際の商業施設の営業実態を無視した、3%基準に無理やり合わせて出してきた、ごまかしの数字だったのです。

そもそも、併設施設面積が3%を超えないことで使用料が減額されるのは、「地域経済への寄与度」を考慮した基準であるとされています。ところが、京都水族館において「併設施設」とされているのは、純粋に売り場の面積だけです。カフェで飲食物を購入すれば、それを飲食する場所が必要です。来場者の多くは、イルカスタジアムや館内に設けられたベンチで飲食していますが、それらの場所はそもそも「併設施設」にはカウントされていません。

そして、「併設施設」に関するごまかしはこれだけではありません。

京都水族館に入館して、「京の川ゾーン」から「かいじゅうゾーン」に入ったところに、「スタジオアリスのフォトコーナー」という併設施設があります。京都市は、このスタジオアリスの面積については21.10平方メートルであると主張しました。おおよそ3メートル×7メートルくらいのスペースです。ところが、実際の「スタジオアリスのフォトコーナー」を見ると、京都市が主張していたスペースは、純粋に撮影のためのスペースだけで、撮影の順番を並ぶ人のスペースが全く算入されていなかったのです。実態としては、撮影の順番を並ぶ人のためにテープで区画され、一般入場者が入れないようになっているスペースが約12平方メートルもあるのです。同様に、「かいじゅうカフェ」の前や、「山紫水明カフェ」の前にもテープで区画された行列用のスペースが取られており、これらは京都市の主張する「併設施設」面積に含まれていません。

これらの行列用のスペースを含めると、「併設施設」面積は少なくとも331.13平方メートルとなり、京都水族館全体の面積の3%を超えることになります。

このように、実際には「併設施設(商業施設)」として使われているスペースをごまかして少なく見積もり、何とか京都市の要綱で定められている3%未満に抑えようとしているのが京都水族館の実態です。

冒頭で書いたように、京都水族館の入場者数は目標を超え、まさに成功した施設です。京都市の公園を利用して収益を上げている施設なのだから、ルールに従ってきちんと使用料を払ってもらいたい。市民ウオッチャー京都が求めているのは、そんなごく当たり前の「正義」の要求なのです。