Xバンドレーダー基地問題について


連載第107回 『ねっとわーく京都』2013年9月号掲載

尾崎 彰俊(弁護士)

1 京都に米軍基地ができる!?

今年(2013年)の2月末、京都府京丹後市の航空自衛隊経ヶ岬分屯基地に「Xバンド・レーダー」を配備する計画が新聞で報道されました。恥ずかしいことに、この話を初めて聞いた時の私の感想は、「Xバンド・レーダーってなに?」と言うものでした。しかし、その後、「Xバンド・レーダー」についての調査を進めるにつれ、とんでもない危険な計画だということがわかりました。

2 Xバンド・レーダーって何?

まず、「Xバンド・レーダー」とは、敵国からミサイルが発射された際に、ミサイルが発射された事を察知するためのレーダーです。このレーダーを経ヶ岬に設置する理由について防衛省は次のような説明をしています。

経ヶ岬は、弾道ミサイルの探知・追尾を行う上で最適の場所であり、経ヶ岬にXバンド・レーダーを配備すれば、弾道ミサイル攻撃に対する我が国の防衛能力が強化されます。

つまり、「Xバンド・レーダー」を設置すると日本の安全性が増すということです。

3 本当に日本が安全になる?

「Xバンド・レーダー」を配備しても日本が安全になるというのは考えにくいと言えます。

経ヶ岬に設置される「Xバンド・レーダー」は、北朝鮮から発射されるミサイルを察知することを想定しています。日本に向けて発射されたミサイルを察知して撃ち落とすということが本当にできるのか、この点については、きちんとした説明はなされていません。仮に日本に発射されたミサイルを「Xバンド・レーダー」で察知できるとしても、米軍からミサイル情報が日本に迅速に伝えられるとは限りません。

実際は、米軍の「Xバンド・レーダー」基地の設置は日本の安全のためではなく、アメリカを敵国のミサイルから守るためのものだと考えられます。

4 Xバンド・レーダー基地設置の危険性

今年の2月26日、防衛省の金澤事務次官と中山京丹後市長が「Xバンド・レーダー」配備計画について面談をしました。中山市長から、「Xバンド・レーダーの設置によって日本への攻撃のリスクが高まるか」という質問がされました。これに対する金沢事務次官の回答は、「Xバンド・レーダー」は発射されたミサイルを探知・追尾するものであり、純粋に防御的なもので敵を攻撃するようなものではないのでレーダー施設が攻撃の対象となることは考えにくいという内容でした。

確かに、Xバンド・レーダーは、武器ではないと思えるかもしれません。しかし、仮に、Xバンド・レーダーが経ヶ岬に設置されると、アメリカの敵国がアメリカにミサイルを発射しても撃ち落とされる可能性があります。ミサイルを発射しても撃ち落とされてしまうなら、まず邪魔者であるXバンド・レーダーを狙って破壊する必要が出てきます。つまり、仮に、Xバンド・レーダーが、経ヶ岬に配備されると、まず「Xバンド・レーダー」が配備されている経ヶ岬が狙われる恐れがあると言えます。

さらに、今回の計画では、「Xバンド・レーダー」を配備するだけではなく、約160人の軍人が配属され米軍基地ができる予定です。これまで、米兵による犯罪が多発してきたことからすると、この点も非常に危険だと言えます。

加えて、「Xバンド・レーダー」は、軍事兵器であることには間違いありません。このような、軍事兵器を日本の安全のためではなく、アメリカの防衛のために設置するのであれば、戦争放棄と戦力の不保持を定めた日本国憲法9条に違反すると言えます。

5 Xバンド・レーダー基地の反対の声を広げよう!

4月23日、京都共同センターの呼びかけで、「京都府民の会結成準備会」が発足し、安倍首相及び山田知事に対する米軍専用レーダー基地設置計画撤回の署名が提起されました。5月1日、「米軍基地建設反対丹後連絡会」が結成されました。私も、結成集会に参加しました。5月22日、「米軍専用レーダー基地の設置の撤回を求める京都府民の会」が結成されました。府民の会では、結成後複数回にわたり烏丸四条、京都駅などで街頭宣伝を行いました。

6月15日には、「米軍基地建設反対丹後連絡会」と「府民の会」の共催で、京丹後市の平海水浴場駐車場において「京都に米軍基地はいらない!6・15丹後集会」が開催されました。あいにくの雨にもかかわらず、500人以上が集会に参加しました。私も集会に参加しました。会場に到着するまでに、道路沿いに数多くの「米軍基地反対」の立て看板が立てられていました。車での参加者も多く、予定していた駐車場がいっぱいになりましたが、現地の地主の方から追加で土地をかしていただきました。

集会では、「Xバンド・レーダー」についての質問コーナーがあり、レーダー基地の問題点がとてもよくわかりました。また、現地の方が米軍基地反対の強い思いを発言されました。私は集会に参加して基地反対の現地の方の強い思いを聞き、さらにいっそう米軍基地反対の声を上げていこうと思いを新たにしました。今後も府民の会では、立て看板や署名活動、街頭宣伝、デモ行進などを予定しています。

Xバンド・レーダーは兵器であり、平和を目指す日本国憲法9条をもつ国に兵器はいりません。今こそ憲法9条を生かす時です。今後さらに、レーダー基地反対の声を広げ、米軍基地の設置を撤回させましょう!!