さあ何を語る市議先生 政務調査費の使い途


連載第110回 『ねっとわーく京都』2013年12月号掲載

寺園 敦史(フリーライター)

今年(2013年)9月7、8の両日、第20回全国市民オンブズマン大会が、龍谷大学(伏見区)で開かれた。大会で議論されたテーマの一つに地方議員に与えられる政務調査費(政調費)の使い途問題があった。これについて、「京都・市民・オンブズパースン委員会」(パースン委員会)の浅井亮弁護士の報告は、大きな反響を呼び、内容は新聞でも報じられた。

■中身空っぽの本会議

浅井氏の報告の要旨は次のようなものだ。市会本会議(2008年度)の議員の代表質問すべての内容を議事録をもとに、(1)事前・現地調査をしているか(2)他都市との比較をしているか(3)改善案を提案しているか──の3基準で数値化したところ、大半の議員はそのいずれもやっていない。新聞報道や当局への問い合わせなどで知り得るようなことを語っているに過ぎず、質問にすらなっていないお粗末な質問も散見される。京都市会議員は年間一人あたま480万円もの政調費を受け取っていながら、その成果が議会にまったく反映されていない。「政務調査」に値することをこれでやっていると言えるのか、というものだった。

もちろん、議員の活動は議会での質問だけではない。また、右の3基準にはなじまない内容の質問もあるだろう。だが、この年度、本会議の代表質問に立った議員の大半が、まともな調査も政策の研究をした形跡もない無内容な質問をくり返していたのは厳然たる事実だ。われわれ市民ウォッチャーも質問内容の分析作業に協力し、私は5人の議員の質問をチェックしたが、「床屋談義」の延長のような空っぽな議論を延々と読まされた感が強い。議員からすると、任期中本会議の場に立つ機会はほんの数回程度だろう。いわば政治家としてのアイデンティティ、集大成が問われる場であるはずだ。この人たちは語るべきものを何ももっていないのかと、腹が立ってきて仕方なかった(居眠りも許されず長時間これに付き合わされる理事者には心から同情します)。

■無透明度増した政調費使途

パースン委員会では以前から京都市議が政調費を本来の趣旨から逸脱する目的に使っている問題の是正に取り組んできた。2006、2007年度支出分について住民監査請求を行い、それぞれ1億3000万円、7100万円が外部監査で「違法」と認定され、市議から市側に返還された。これにより、政調費を使う際はすべて領収書コピーをつけた報告書を提出することが義務づけられる改善策が採られるなど、大きな成果を挙げている。

ところが以降、自民党、民主・都みらいを中心に、年間480万円の政調費の大半あるいはすべてを人件費、事務所費(家賃)に使ったと報告する議員が激増したのだ。議員からすると、スタッフの給料と家賃に使ったと言っておけば、実態はどうあれ外部からチェックされる心配がなくなる。パースン委員会では2008年度分についても「政務調査」の実態がないと住民監査請求したが、監査委員は「証拠が示されていない」との理由で却下した。制度の改善が逆に政調費使途の不透明化を促進してしまったことになる。

■議員に説明させろ

パースン委員会は2011年6月、年間政調費の4分の3以上を人件費と事務所費に充てている議員15人(より悪質だと思われる)などを対象に京都地裁に提訴した。裁判の中で、これら15人が「政務調査」を行っていないことを示す例証として、冒頭で紹介した本会議での質問内容を分析したわけである。これに対し、被告京都市側は、議会質問だけが議員活動ではないし、金を使わなくても政務調査はできる、いやそれ以前に原告が示した分析は「主観的な判断にもとづくもの、あまりに稚拙で反論する価値もない」などと主張した。

訴訟はこのまま終わるかと思われたが、裁判所側が市側に対し意外なことを言い出した。「議員一人ひとりに、どのような政務調査活動をやったか具体的に説明する陳述書を提出させろ」と。市側はあの手この手を使いこの要請をかわそうとしたものの、最後には議員に提出を求めることを約束させられたのである。

次回の裁判日時は11月12日10時。15人の議員はそこで何を語るのか(実際は書面を提出するだけだが)、傾聴してみたい。