地元を軽視する防衛局の実態 Xバンドレーダー基地問題


連載第117回 『ねっとわーく京都』2014年7月号掲載

吉本 晴樹(弁護士)

防衛省は、京丹後市経ケ岬への米軍Xバンドレーダー基地(以下「Xバンド基地」という)の設置を急ピッチで進めている。

しかし、近畿圏では初めてとなる米軍専用基地を設置する重大性や強力な電磁波を発するXバンドレーダーによる健康被害、基地設置による住民生活への危険、そもそもなぜ米国本土防衛のためのレーダー基地を京都へ配備するのかなど数々の不安や疑問についてまともに答えないままに設置が強行されようとしている。

私が所属する弁護士の団体である自由法曹団京都支部は、弁護士18名で、本年(2014年)2月28日、京丹後市役所丹後庁舎において、近畿中部防衛局 現地(京丹後)連絡所の担当者および京丹後市基地対策室の担当者との懇談を行った。しかし、懇談における防衛局の対応には驚き、呆れ、最後には憤りを覚えざるを得なかった。

憲法上の位置づけが説明できない

懇談の冒頭、Xバンド基地の日本国憲法上の位置づけについて質問したところ、防衛局担当者の回答は次の通りであった。

〔回答〕憲法的な話はデリケートなところがあるので、私では答えられない。防衛本省の考え方もあるので、出先機関としては答えられない。

Xバンド基地の日本国憲法上の位置づけが説明できないとは、我々としても想定外であった。防衛省の出先機関は、憲法のことなど考えずに職務を行っているのか。恐ろしい話である。

ついでに集団的自衛権との関係についても水を向けたところ、Xバンドレーダーが日本の集団的自衛権の行使を前提とするかのような回答がなされたのにも驚かされた。安倍首相自身の意欲はともかく、集団的自衛権の行使は日本国憲法上認められないというのが懇談時点での日本政府の立場であるはずだ。懇談に対応した防衛局担当者はかかる基本的な前提をも無視しており、一同唖然とさせられた。

また、昨年来、半ば強引なやり方で地権者との用地取得契約が進められた問題について尋ねたところ、「用地取得は別の部署がやっているので、情報は入っていない。所掌が違うので分からない。」との回答であった。しかし、防衛局現地連絡所は地元の対応窓口のはずである。それが状況を把握していないとは、理解に苦しむばかりである。

地元を軽視する防衛局の姿勢

そもそも、我々弁護士は防衛局京丹後連絡所に対して約1か月前もから懇談要請していた。したがって、こちらとしては中身のある有意義な懇談を期待していた。しかし、当日、所長は「所用で不在」との理由で、Xバンドレーダーの日本国憲法上の位置づけすらまともに説明できないような一所員に対応させたのであった。

つまり、防衛局は、Xバンド基地設置について、地域住民や京都府民に対する十分な説明をするつもりは全く無いのである。今回の懇談での対応はそのことを雄弁に物語っている。

なお、同連絡所の体制について尋ねたところ、次のような説明であった。

〔回答〕京丹後連絡所は、所長と所員1名の2名で構成される。所長は、京都防衛事務所の長との兼任である。所員は、近畿中部防衛局の各課(総務課、会計課など)から1名派遣され、1週間で交代する。だから次の週に誰が来るのかは分からない。

そんな無責任な体制があるだろうか。基地設置後に米軍人・軍属による事件や事故が発生した場合、被害を受けた住民側の窓口になるのが防衛局連絡所のはずである。しかし、その担当者は「一週間で代わる」というのである。被害を受ける住民側とすればとんでもない話である。

受入れ撤回しかない

今回の懇談では、防衛局が、Xバンド基地設置において地元を完全に軽視しているという信じたい実態が明らかになった。このまま基地設置を強行したところで、地域に禍根を残すことは明らかである。もはや基地受入れを撤回させる以外に途はない。