京丹後・米軍基地問題について


連載第138回 『ねっとわーく京都』2016年6月号掲載

尾﨑 彰俊(弁護士)

はじめに

京丹後市に米軍専用のレーダー基地が設置されるとの発表が行われてから3年以上が経過した。これまで、ウオッチャーレポートでも複数回報告を行ってきたが、3年が経過した現在も米軍基地問題は解決するどころか新たな問題が増える一方である。
自由法曹団京都市支部では、毎年2月に現地調査及び現地の方と懇談を行ってきた。2016年2月27日にも現地調査および現地の方と懇談を行った。今回は、現地調査の内容報告及び新たに発生している米軍基地問題について報告する。

住民の安心・安全が守られていない!

京都府知事及び京丹後市長は、Xバンド・レーダー基地の受け入れ表明をした際に、住民の暮らしについて「住民の安心安全が確保される見通しがついた」と表明した。しかし、この3年間で、住民の安心安全は全く確保されていないことが、明らかとなっている。むしろ、日々の住民の安心した暮らしは脅かされた状態となっている。

これまでに発生した米軍軍属による交通事故は20件を超えている。そして、2015年12月25日、網野町で2件目の人身交通事故が発生した。新聞報道及び懇談した現地の方からの聞き取りによれば事故内容は次の通りである。2件目の人身事故は、地元の青年が運転する軽自動車と米軍属が運転する普通自動車の衝突事故であった。青年の車は大破し、青年は全治3週間の負傷を負っている。

この事故の大きな問題点の一つは、青年と米軍属の言い分が全く食い違っている点である。青年は、自分が青信号で直進したところ米軍属が赤信号を無視して交差点に進入してきたと述べている。これに対して、米軍属は、自分は青信号で交差点に進入したと述べている。このように当事者の主張が食い違っているにも関わらず、後日行われた現場検証は、青年が車に乗せられたままで米軍属の立ち会いもなく行うという非常に不十分なやり方であった。住民の安心・安全というのであれば、このような人身事故が起きた場合には、しっかりとした現場検証を行い、責任所在をはっきりとするべきである。

2016年1月24日には、基地警備軍属の通勤ワゴン車が民家に追突するという事故が起きた。地元の方のお話では、事故が起きた日は、強烈な吹雪が吹いており、前がほとんど見えない中で、スピードを出しすぎたのではないかとのことであった。

このような危険な事故が起きているにも関わらず、きちんとした現場検証も行われず、責任所在があいまいにされ、住民の安心安全等全く確保されていない。

現地視察

ウオッチャーレポート№126では米軍基地の発電機の騒音問題について報告した。あれから、1年が経過したが、騒音問題は解決されておらず、24時間騒音が続いていた。また、今回現地を視察してみて、騒音問題だけではなく、現地の様子はこれまでとはあまりにも大きく変わっていた。昨年は、工事が半分ほどしか進んでおらず、大きな空き地があり、空き地にはロープが張られている程度だった。しかし、現在は、ロープの代わりに高さ2メートル程度の大きなフェンスが作られ、空き地部分には、米軍の施設が建てられていた。フェンス越しには、銃を持った米軍が見張りをしていた。

米軍基地の北側の丘から基地の中全体を見渡すことができるが、米軍施設の中には、直径が数メートルもある巨大なサッカーボールのような通信設備が設置され、去年の訪問の時とは全く状況が違っている。住民の安心・安全に関する対策は放置された状態で、基地の建設工事だけを進ませてしまう態度には非常に怒りを感じる。

Xバンドレーダーの問題

米軍基地は、住民の安心・安全な暮らしを脅かすという問題とともに安倍政権が進める安保法制と深い関わりがある。2015年9月19日、大多数の国民が憲法違反であるとして反対した安保法制を安倍内閣は強行採決した。この安保法制は集団的自衛権の行使を認める内容となっている。

一方で、Xバンド・レーダーは、アメリカに向けて発射された弾道ミサイルを探知するためのレーダーであり、アメリカのミサイル防衛システム一部をなすことが予定されている。アメリカに向けて発射された弾道ミサイルを探知し、その情報をアメリカに伝えるということは、まさに日本国憲法が禁止する集団的自衛権行使の実践にあたる。

米軍基地問題は、日本国憲法との関係、騒音問題、交通事故の問題以外にも、米軍の居住地問題など多くの問題があり、住民の不安はつのる一方である。京都府知事及び京丹後市長は、当初の受け入れ表明の際に、住民の安心・安全が確保されたと述べた以上、住民の安心・安全が脅かされているのであれば、すぐにでも米軍基地を受け入れ拒否するべきである。米軍基地が撤去されるまで、今後も、反対運動を続けていきたい。