京丹後・米軍基地問題について


連載第126回 『ねっとわーく京都』2015年5月号掲載

尾崎 彰俊(弁護士)

1 はじめに

2013年2月、京都丹後市に米軍専用のレーダー基地が設置されるとの発表があった。その後、大きな反対運動にも関わらず、住民の安全・安心についての十分な説明がなされないまま、2014年10月21日、Xバンドレーダーが搬入された。レーダー搬入後、米軍による交通事故・基地の発電機による騒音問題等、住民の暮らしに重大な事態が発生している。この事態を踏まえて、2015年2月27日、自由法曹団京都支部では現地調査及び基地対策室との懇談を行った。以下では、その結果を報告する。

2 米軍基地の騒音問題

米軍基地には、Xバンドレーダーが設置されている。このレーダーを動かすために発電機が6つ設置されているが、この発電機から夜も寝られないほどの深刻な騒音が発生している。

私たちが、実際に基地を訪れたところ、ウォーンという音が常になり続けていた。数分ならまだしもこれを1日中夜中まで聞き続けるのは堪えられないと感じた。

基地訪問後、現地の方にお話を聞いたところ、2015年1月8日、袖志の方が、「とにかくうるさくて夜寝られない」と訴えたそうだ。さらに同年21日、25日に行われた袖志、尾和の説明会では、多数の住民から騒音問題について何とかしてほしいとの意見が出され、防衛局の責任者は「想定外であった。申し訳ない」対策をすると説明されたそうだ。

防衛局が説明した対策は2つある。1つは、騒音のもとである発電機に消音のマフラーをつけるというものだ。防衛局からは、このマフラーはアメリカで開発された特別のものだという説明があった。しかし、私たちは、マフラー設置後に現地を訪れたが、騒音は続いており、騒音防止の効果についてはあるとは感じられなかった。

防衛局が説明した2つ目の対策は、関西電力から電気を引いて発電機は予備電源とするというものである。防衛局の説明では、関西電力から電気を引くためには、高圧電線の配線などの大掛かりな工事を行わなければならず、1年以上かかる。結局、防衛局が説明した対策は対策とはいえるものではない。住民の安心した暮らしのためには、まず、発電機を停めなければならないのであり、発電機を動かし続けることは許されない。

3 基地対策室との懇談

米軍基地訪問後、京丹後市の基地対策室と懇談を行った。基地対策室との懇談テーマは、米軍人・軍属の居住地の状況、米軍人・軍属の犯罪・事故の発生状況、騒音・照明問題の現状と対策、基地の警備状況等についてである。

まず、基地の警備状況については、米軍の所有している武器の数は把握していないとのことであった。住民がとても不安を感じている騒音問題については、基地対策室からは、2月中旬からマフラーの設置を行った。その結果、「比較的音は静かになった」「過ごしやすくなったとの声」があり、防衛局には、引き続き騒音を小さくするよう働きかけているとの説明がされた。

これに対して、まず、マフラーをつける前後で音が小さくなったのかどうか対策室として客観的なデータの調査を行っているのかを質問したが行っていないということであった。マフラーをつける前後で、音がどの程度変わったのか客観的なデータを提示することは防衛局に対して騒音を小さくするよう働きかけを行う上で大前提になるはずである。それにもかかわらず、その客観的なデータを対策室として集めようとしていないことに対しては抗議し、対策室として客観的なデータを集めるよう申し出を行った。

米軍・軍属の居住地の状況については、現在、峰山のホテルに滞在中で、居住施設を探しているとのことであった。この点については、日本人は住民登録があるから住所と名前を把握できるが、米軍は地位協定に基づいて登録義務がないので、仮に何か問題が起きたときに行政として、迅速に対応できるよう行政としての責任で住所と名前を把握するよう伝えた。例えば、防衛局と交渉して、司令官と連携して、基地外の者につき申告させる。あるいは、条例を作って、米兵居住の建物の貸主に申告させる等方法がある。

米軍人・軍属の犯罪・事故の発生状況については、私たちが基地対策室を訪問した2015年2月27日現在で、全部で14件である。米軍側が加害者となった事故は9件。うち1件が人身事故である。基地対策室としては、すべての事故について連絡を受けているとの説明があった。私たちは、基地対策室に対して、住民は事故が起きた際にまず、米兵相手に何をするべきかわからないので、事故が起きた際に、まず何をするべきか住民に知らせる広報活動を行ってほしいと伝えた。他にも、公共下水道の整備に関する問題、ゴミ処理、米軍と住民との交流イベントについて等合計1時間程度懇談を行った。

今回の現地調査、懇談を通して、米軍基地が住民の暮らしに与える不安の大きさが改めて明らかになった。早期に騒音の原因となっている発電機を停止し、米軍基地自体を撤去しなければならない。そのために、今後も大きな反対運動を続けていきたい。