政務活動費から日本会議の会費を支払うことは適当か


連載第159回 『ねっとわーく京都』2018年5月号掲載

井関 佳法(弁護士)

日本会議は、安倍首相や昭恵夫人と並んで、財務省の森友文書の改ざん隠蔽対象とされました。また、安倍改憲の推進母体としても知られる団体です。

市民ウォッチャー・京都が京都府会議員の平成28年度の政務活動費を調査したところ、自民党の府会議員28名中19名が、日本会議の年会費1万円を政務活動費から支払っていたことが分かりました。議員別の支払い状況は表1のとおりです。

表1 ◯は政務活動費で会議を支払っている議員
岸本裕一 林田 洋 × 石田宗久 植田喜裕
荒巻隆三 × 菅谷寛志 小巻寛司 秋田公司 ×
二之湯真士 近藤永太郎 × 前波建史 × 渡辺邦子
井上重典 × 池田正義 × 四方源太郎 村田正治
藤山裕紀子 本田太郎 田中英夫 × 中村正孝
園崎弘道 磯野 勝 能勢昌博 中川貴由
尾形 賢 巽 昭 × 片山誠治 兎本和久

日本会議のHPによると、日本会議は日本会議地方議員連盟を組織しており、古い記載ですが、1500名の議員がいるとか、3000名を目指しているとか説明されています。

安倍内閣は、主要閣僚がいずれも日本会議国会議員懇談会のメンバーであり、「『日本会議』政権」とも評されています。自民党京都府議団も、「日本会議」府議団となっているようで、まずこのことに驚かされます。

日本会議の会員であることと、日本会議の会費を政務活動費から支払っていることとは別問題であるはずです。

以前は、日本会議のHPで、日本会議地方議員連盟に加盟している地方議員の名簿を、公表していたそうですが、今は掲載されていません。従って、日本会議の会費を政務活動費で支払っていない京都府会議員が、日本会議の会員か否かを確認することが出来ませんでした。

では、他の議会ではどうなっているのでしょうか。近隣府県議員の政務活動費を調べてみました。その結果は、表2のとおりでした。

表2 政務活動費で会議を支払っている近隣府県議員
府県 会派名 議員数 支払者数
奈良県 自民党 10 0
滋賀県 自民党 20 0
兵庫県 自民党 8 0 但し、会は役員以上のみ調査
大阪府 自民党 7 0 但し、幹事以上の役職者のみ調査
大阪府 維新の会 9 1 但し、幹事以上の役職者のみ調査

近隣府県の自民党(大阪のみ、維新の会を含む)府県会議員の中で、政務活動費から日本会議の会費を支払っている議員は、意外なことに、ほとんどいませんでした。

京都の自民党の府会議員だけが日本会議に組織されているとは考えにくく、近隣府県の自民党府県会議員の中にも日本会議会員(あるいは日本会議地方議員連盟加盟議員)が相当数いると思われるのに、日本会議の会費を政務活動費から支払っていないのです。

例えば、大阪の自民党の吉田利幸府議会議員のHPによると、吉田議員は日本会議地方議員連盟幹事長を務めていますが、政務活動費から日本会議の会費を支払っていませんでした。何故でしょうか。

政務活動費は、地方自治法に基づき「議員の調査研究その他の活動に資するために必要な経費」の一部として交付されるものとされています。

京都府の政務活動費マニュアルに拠れば、政務活動費を充当出来ない経費として「政党活動に要する経費」があげられており、また団体会費の項を見ると、支出対象外とされているものとして、①活動が政務活動に寄与しない団体、③政党本来の活動に伴う大会等、⑥宗教団体、等が列挙されています。

日本会議は、「美しい日本の再建と誇りある国づくりのために、政策提言と国民運動を推進する」「全国に草の根ネットワークをもつ国民運動団体」で、これまでに元号法制化運動、皇室の奉祝運動、教育正常化や歴史教科書の編纂事業、伝統に基づく国家理念を提唱した新憲法の提唱などを展開してきた実績を持ち、「日本会議国会議員懇談会」の国会議員、「日本会議地方議員連盟」の地方議会議員を抱えていると言っています(HP)。

日本会議の活動は、立場・意見は異なるとしても、議員活動と無関係とは言いにくく、「①活動が政務活動に寄与しない団体」とは言いにくいでしょう。また、政党とも認識されておらず「政党活動に要する経費」とも言えず、形式的に見ると支出対象外にはあたりません。

しかし、日本会議が、政党以上に政党らしい団体であること、そして近隣府県の議員が感覚的にそのことを自覚していることが、形式的には政務活動費からの支出が制限されていないのに、ほとんど政務活動費から支払われていない理由ではないか、私はそのようにみています。

政務活動費から団体会費を支出する場合に想定されているのは、一人一人の議員さんが、自らの政策実現の為に、関連団体の会員になって調査活動や政策実現活動を展開するという形でしょう。団体加入は議員の政策実現の手段になります。

これに対して、日本会議の場合は、日本会議が議員を政策実現の手段としている、逆の関係になっているのではないでしょうか。

いずれにしても、日本会議の会費の政務活動費からの支払いについては、見直しを求めたいと思います。