情報公開制度をもっと気軽に活用しよう


連載第70回 『ねっとわーく京都』2010年4月号掲載

豊田 陽(自営業)

近所のおじさんが民間の清掃会社で働いているのだが、最近ひどく元気がない。聞くとクリーンセンターにごみ回収車を搬入する際に壁を擦ってしまったとのこと。やがて何かの理由で京都市から勤務先の会社に厳重な指導があり、その処分としてボーナスが大幅にカットされそうだという。「どんな内容の指導が京都市から出されたのかわかれば会社とも交渉しやすいし、ある程度、納得もいくんだけど」と言う。それなら一度、自分でその指導内容について情報公開請求してみたらとアドバイスすると「情報公開って素人でもできるんか?市会議員や弁護士の資格とかないとできないんとちゃうのん」、「いや、市役所の情報公開コーナーに行けば誰でも無料でできる」とアドバイスするとおじさん「さっそく一回、行ってみるわ」。

意外と親切、役所の考え方も分かる

後日、どうだったかたずねると「親切丁寧に請求の仕方を教えてくれた」とのあかるい感想。たしかに役所の窓口の中でも情報公開コーナーの応対は丁寧だと思う。「こういった内容のものが手に入らないか」を窓口で伝えると一生懸命それらしい文書が見つかるように請求内容や請求先を一緒になって考えてくれる。そういえば筆者の場合、初めて情報公開請求したのが、自動無人公衆トイレの件。JR二条駅前と嵐山に百円を入れると使用できるトイレが設置されているが、果たして採算がとれているのか、どういう経緯で設置に至ったのか軽い気持ちで調べてみようと思った。余談ながら、自動無人トイレはフランス製、アメリカ製などさまざまあるが、京都市に設置されている2台はソウルオリンピックの際に使われたものを安く下取したもので、たしかに見積もりのなかでいちばん安かった。

ところが情報公開請求をしても欲しい文書が出てこない(もともとそういった文書がない)との理由で取り下げを薦められることもある。以前、フィンランドやオランダの公立教育と比較するため(*両国とも教員の残業がほとんどない)京都市の公立小中校の教員の残業時間を調べようとしたことがあった。

すぐに情報公開コーナーの窓口に教育委員会の担当者から内線電話がかかってきて「えーおっしゃることはよくわかるんですが、京都市の場合、教員は残業しておりません。(残業はありません、という言い方だったかな?)給料に残業代が含まれているので、もとから残業という概念はありません云々」とかなり長々と説明があった。うちの近所の中学なんか毎晩11時近くまで煌々と灯りがついているのだが、あれはいったい何??

ともかく、情報公開請求をすると希望する文書がでなくても役所なりの“考え方”や“理屈”あるいは市民感覚とのズレがよくわかる。

情報公開制度の問題点

ところで、いままで情報公開請求してみて問題だと思うこと、あるいはもっと改善できないかと思うことが三点ある。その一、情報公開請求をしてから回答が出るのはたいてい14日後だ。条例には「14日以内」と書いてあるのだから内容によってはもっと早く公開できないものかと思う。その二、情報公開コーナーの窓口は平日しかオープンしていない。情報公開制度の性格上、仕方ないことかもしれないが平日の昼間だと(しかも昼休み時間中は請求できない)一般人はなかなか行けないので、これはなんとかならないものかと思う。その三、この文章のなかでも書いたように情報公開制度や情報公開コーナーの存在がじつはあまり知られていない。情報公開制度は市民と役所が意見や考えを交換できる場でもあると思うので、もっと広く活用されていいと思う。

そのためには、情報公開請求がむずかしいと思われている誤解を解く必要がある。たとえば気軽なセミナーや講座をひと・まち交流舘などで開催してみたらどうだろうか。そういったことも「市民ウォッチャー京都」の活動の一環として行ってみたいと思う。