京都市教委の金銭感覚


連載第81回 『ねっとわーく京都』2011年4月号掲載

中野 宏之(京都市教職員組合副委員長)

京都市教育委員会は、口を開けば、「金がない」と財政危機を唱え、来年度予算で、今年度に比べて37億7700円(△7.5%)もの教育予算を削減しています。市の財政が厳しいのは事実ですが、その一方で教育予算の不透明さ、使い道について、本当に問題はないのでしょうか?

1 相変わらず一点豪華主義の予算投入

2008年の市長選挙の際、地元新聞は『「一点豪華主義」という批判を免れない』と一部の「パイロット校」に対する多額の予算投入を批判しましが、その姿勢はいまだに変わっていません。あまりに乱暴な学校統廃合と開校を急ぐ突貫工事が新たな問題を生み出しています。

今年(2011年)4月開校の小中一貫校・東山開睛館では、小学校1年生から制服が導入され、小学校5年生から教科担任制で授業が行われます。学校給食は、小学生も中学生も自校方式の完全給食が実施され、さらに、蹴上や東山三条からは臨時の市バスによる送迎が行われます。まさに、他の普通の学校では考えられない教育条件です。校舎の建設費も通常の3倍の69億円がかけられています。

その学校で開校直前にもかかわらず、湧き水対策に新たに2億円の費用がかったことが各学校で報告されたそうです。その結果、開校にむけた準備で大慌ての学校で、今まで新しい学校の備品は、「新品を購入する」となっていたものが、「使えるものはそれぞれの学校から持っていく」と方針転換がされたそうです。

もちろん新しいものに越したことはありませんが、他の学校では新入生に対して、「使えるものはとことん使う」と新しい机の購入を拒み続けているのが市教委です。同じ教育予算で、「備品は何でも新しいのを買っていい」としていたとしたら、まさにダブルスタンダードの「格差」行政ではないでしょうか。

2 消えた国の35人学級予算?

「えー、国が少人数学級を実施するのに京都市は今と変わらないの?」

こんな疑問の声が学校現場や保護者の中から起こっています。国は遅ればせながら、今年の4月から小学校1年生の1学級の児童数の上限を40人から35人に削減する学級編成基準の改善を実施します。京都市ではすでに国に先がけて、小学校1年生・2年生の35人学級、中学校3年生の30人学級を、保護者や市民、教職員の切実な要求に応えて実施してきました。

しかし、平成23年度予算で市教委は、この35人学級を小学校3年生など新たな学年に広げる措置を取らず、少人数教育の市独自予算を約1億7千万円も削減しています。当初市教委は、「独自措置を行っている市町村には定数がもらえるかわからない」などと発言していました。

しかし、政府がすべての都道府県に予算措置を行い、「なるべく、少人数学級を拡大するよう」指導しているにも拘らず、今回の予算削減です。国の措置が結局、京都市の教育条件の改善につながらないことを、子ども・保護者や市民は納得できないのではないでしょうか。

3 「二期制」の破綻を覆い隠す「通年制」の導入

市教委は、来年(2011年)度から「二期制(前期・後期制)」を改め、「通年制」にする方針を決めました。

市教委は全国に先がけて、現場の圧倒的な教職員の反対を押し切って、「二期制」導入を全校に押しつけました。その際、管理運営規則を変更し、「子どもにとって本当にいいのか?」との論議すら封殺し強要しました。「夏休み前に、それまでの学習の到達と課題が分かる通知表がほしい」とする保護者や子どもの当然の願いにも背を向けるものでした。

同時に、制度導入は授業日数日本一を掲げる市教委の「205日」強行と相まって、京都市の教育を大きく変えました。暑い暑い京都で、夏休み前の短縮授業も全面的に廃止され、今年(2010年)度も8月23日から授業が始まった学校もあります。クーラーをかけても、「教室が暑くて子どもがグッタリ、給食も食べれない」など、教育効果に対して疑問の声も上がっています。その上、今年は「べらぼうな暑さ」で光水熱費が急上昇し、市教委は急遽、全校で6000万円の追加予算を配分せざるを得ませんでした。

そして、今回の「反省なし」の二期制取りやめです。市教委は、今回の破綻をきっかけに学習時間(量)だけを増やす施策の抜本的な改善を考えるべきではないでしょうか。

今後も、市教委の教育施策や教育予算の使われ方を監視し、一歩でも京都市の教育条件を改善するよう世論を広げていかなければなりません。