連載第86回 『ねっとわーく京都』2011年10月号掲載
岡根竜介(弁護士)
9月号で案内させていただいていた、「京都市教委の体質…またしても京都市教委-不正・不祥事はなぜやまないか」パンフレットが完成しました。今年(2011年)5月にパンフの副題を冠して行ったシンポジウムが好評であったことから、広く市民のみなさんに京都市教委の体質を知ってもらいたいとして作成したものです。
これまでから、京都市教委は様々な問題を引き起こしていました。現京都市長が市教委に関与していた頃にも、いろんな事をやらかしています。
そんな中で、学校現場では、予算が少ないからと学校関係予算が削除され続けています。今後の京都(社会)を背負って立つ子ども達にかける費用をせびっていたのでは、未来社会に暗い影を落としかねません。根本的な見直しが必要です。
ところが、子ども達に付けを回しておきながら、京都市教委の予算の使い方はといえば、全く持ってでたらめです。
昨今、教育現場での「格差と貧困」が重視されるようになり、教育を受ける機会の格差をいくらかでも解消するため、ようやく公立高校授業料の無償化が実現されることになりました。しかし、義務教育無償化の対象である小学校、中学校では保護者負担が増大しています。別途、年間4万円を超える給食費も負担となります。他方、中学校では、まともな給食がありません。お弁当を作るのが親の愛情だと、給食の導入を拒否してきたのが京都市の姿勢です。お弁当に愛情が含まれていることを否定はしませんが、それを、給食制度の導入を否定する理由にするという感覚が全く理解できません。
共働き家庭が多い中、朝練などがあると、睡眠時間を削ってのお弁当作りは並大抵のことではありません。さらに、これだけ暑い日が続くと、朝作ったお弁当の食中毒も気になります。熱を加えただけでは死滅しきらない菌も結構沢山存在します。30度を超える気温は、菌増殖の絶好条件だったりします。ですので、作りたてに近い安全で美味しい給食を、と願う保護者の願いは切実です。しかし、市教委は、そんな願いには背を向け続けます。
ところが、保護者の負担を増大させ、次々と教育予算を削りまくっている中で、教育委員会の予算だけがなぜか全く恣意的に執行され続けています。チェックするシステムがなく、それを(内部から)見直そうという機運もありません。教育委員会は、教育現場で生じている問題に対処できるような機関ではなくなってしまっています。会議のあり方や教育委員の選任のあり方など、見直すべき問題が山積しています。
パンフレットでは、そんな、京都市教委の体質が引き起こしてきた問題を、訴訟にまで発展してしまったものの中から紹介しています。
とんでもない事件が続いているのですが、注目してもらいたいのは、裁判後の姿勢です。たとえば、広く市民の意見を聞くはずのタウンミーティングにおいて、不正抽選を行い、反対意見を述べそうな応募者を排除した問題です。2011年3月、最高裁において、原告側勝訴が確定しました。国や京都市が行った不正抽選を違法であるとする大阪高裁の判決を不服とする上告が棄却されたのです。
ところが、この不正にどっぷりと浸かって「やらせ」を行っていた市教委は、最高裁での敗訴確定を受けても反省の姿勢を全く示していません。訴訟中、国に対して責任転嫁の主張を繰り返しすことに終始していたに止まらず、判決確定後も、取り敢えず全くもって形式的な謝罪文だけは出したものの、関与した関係者の処分などはなにもしていません。自浄作用がないのです。
これは、京都市教委中心者の特質なのでしょうか。判決で断罪されても反省もしない。この姿勢は、パイオニア委託事業住民訴訟における現京都市長も貫いています。ここで断罪されたのは恣意的な予算の使い道です。このケースでは、公金が「研究委託」名目において、一部の教職員にのみ支給されていました。一部の教職員とは、もちろん、校長や市教委のお気に入り(つまり今の市教委などの問題ある教育行政を推し進める側にいると考えられる教員)限定です。露骨な教員分断のための政策推進に悪用されてしまっていました。
ところで、裁判所が行政の行ってきた行為を「違法」と判断することは残念ながら滅多にありません。少々の(私たちの感覚からは「少々」ではないんですが…)ことは、「裁量権の範囲」などと言って追認してしまいます。ですので、「違法」と判断されたということは、余程のことが起こっていたということなのです。
それにもかかわらず、司法判断など何するものぞと言わんばかりに、現京都市長をはじめとする関係者は今なお「事業の目的は正当だった」と開き直っています。市民への謝罪もしていません。そんな姿勢ですから、当然のように関係者の処分など全く行っていません。行おうともしません。市の予算を不正に使用していたのにです。
とにかく、このようなことが繰り返されています。
「京都市教委の体質」パンフ、すこしでも市民に広がって、京都市教委の体質改善につながれば、と願います。