また無駄遣い! 市会議員の海外旅行が復活してしまった…


連載第111回 『ねっとわーく京都』2014年1月号掲載

岡根 竜介(弁護士)

市会議員による海外行政視察とは名ばかりの豪華海外旅行、2005(平成17)年を最後に行われていませんでした。何度かこのコーナーにも取り上げてもらい、大阪高裁での視察の一部が違法であり費用返還が認められたことも受けて、ここ数年はやめていたのです。

中止になったときには、これでようやく税金の無駄遣いの一部が節約できた、と喜ばしく思っていました。ところが、2012(平成24)年度から、再度実施されるようになってしまったのです。

これまで行きたくて行きたくて仕方なかったのでしょう、市民の了解もなく一旦復活をごり押ししてしまえば、2012年度分の2013(平成25)年1月26日〜2月4日を皮切りに、ほぼ同時期の1月30日〜2月8日、2013年度分の2013年7月28日〜8月5日(9日間)と立て続けに実施しています。

さすがに、以前の批判を受けて、議員1人当たりの最高額は少しだけ下げられたりはしたものの、上限(100万円)ギリギリまで使うという大盤振る舞いは相変わらずです。

中止の原因となった大阪高裁判決では、「議員として、幅広い見識や国際的な視野を持つことは、もとより期待されているところであるが、基本的には自己研鑽によって獲得すべきものとも考えられ、情報化が進み、海外旅行が容易な時代になっていることなども考慮すれば、今後このような一般教養取得型とも言うべき海外視察を温存すべきかは大いに検討の必要があろう」と指摘されていました。

とすると、この状況が変わったのでしょうか。一般市民も含めた真剣な「検討」が行われたのでしょうか。残念ながらそのような検討がなされたとはとても思えません。「一般教養取得型」そのままです。

ちなみに、再開の最初に取り上げられたのは、「再生可能エネルギーに関する海外先進事例の取組」という調査テーマです。しかし、驚いたことに、これに参加した議員は、3・11の原発事故の後も原発再稼働を推進し、原発を海外に輸出しようとする政策を進めている自民党と民主党の議員なのです。その所属する政党の中央と京都市の政党が政策で対立しているとはとても思えません。そのような議員が、京都市の政策として、脱原発を推進し、再生可能エネルギーの導入を図ることを真剣に考えているとはとても思えません。

その姿勢が、この旅行後の対応にも現れています。わずかに5月14日に1日だけ調査報告会が行われてはいますが、未だに調査報告書も作成されてもいません。できあがったら、ホームページに載せて市民に広く広報するはずなのですが、放置されたままです。参加議員による再生可能エネルギー政策を推進しようとする積極的な議会での発言もありません。報告会での報告も、わざわざ海外にまで行かなくてもいいような代物(あえてこのような言い方をしますが)です。既にいろんなところで、しかも数年前に指摘されているような範囲を一歩も出ません。

市民には、財政が厳しいと様々な福祉政策を削ったり、高い国保料の負担を強いているにもかかわらず、市民にとってはなんの役にも立たない旅行を、議員1人100万円も費やして「復活」させたのです。このひとつの「海外調査」で、京都市が費やした費用は約800万円にもなります。

行き先は、フランクフルト(これは空港だけ)、フライブルク、リンダウ、ミュンヘン、バルセロナと国境を越えて移動し、内容も、相変わらず少しだけ話を聞いて後は「暫しご歓談を」的な観光だったものと思われます。

参加された議員さんが、今まで行われてきた研究成果を超えてこの海外調査ではこんなに大きな成果をあげたと御主張されるのなら、具体的に示してもらいたいものです。そして、京都市の具体的な政策として提言をしてもらいたいものです。京都には、いろんな再生可能エネルギーを取り入れるのに適した土地も備わっています。真剣に検討するなら、原発には全く頼らない市独自の電力を取得することも可能な条件下にあります。また、その政策推進が新たな雇用を生み出すことにも繋がります。

ちなみに、私も所属する自由法曹団京都支部では今年結成50周年を迎えるにあたり、記念企画として「脱原発」などの調査旅行としてヨーロッパを訪れました。もちろん「私費」です。日数はほぼ同じですが、使った費用は議員の使った額と比べるとほぼ半分(以下)で済んでいます。2日ほど観光中心の日はありましたが、朝から晩までずーっと聞き取り等の会議でした。もちろん、調査報告書は、帰国後数日のうちに作成されています。是非参考にして下さい。

それに対して、湯水のように市民の税金を注ぎ込んだ議員さんの調査旅行では、未だに報告書すら作成されていません。

本当に、海外(調査)旅行の再開にあたり、裁判所の指摘に対しても十分に検討され、市政の上での必要性を満たしていたというのであれば、実施後1年近くも経過するのに、その具体的な成果を市民に還元していないのはどうしてなのでしょうか。他の2つの調査旅行共々、具体的な成果をどのように市民に還元するのかを示してもらいたいと思います。