連載第112回 『ねっとわーく京都』2014年2月号掲載
三上 侑貴(弁護士)
1 京都市市営住宅の空家整備の実態
京都市には市営住宅がたくさんあります。では、京都市の市営住宅の空家整備については、誰が、いくらのお金をもらって、どのように行っているのでしょうか。そして、それを市はきちんと監督しているのでしょうか。
「市民ウォッチャー・京都」は、京都市住宅供給公社に対し、京都市の市営住宅についての修繕工事委託契約に関して、過去10年間にさかのぼって空家整備発注一覧を開示するよう求めて情報公開請求を行いました。同時に、京都市に対し、京都市から住宅供給公社への委託料支出命令一覧を開示するよう求めて情報公開請求を行いました。
すると、京都市の市営住宅の空家整備について、特定の業者だけに対してのみ発注している地区が複数あることが明らかとなりました。
2 問題点
京都市は、全ての市営住宅の管理を京都市住宅供給公社に委託しますが、修繕管理に要する費用が適正になされるように京都市住宅供給公社が行う修繕管理業務を監督する責任があります。
ところが、京都市は、上記のような特定の業者との修繕工事委託契約を締結するという京都市住宅供給公社の不適正な業務執行について、監督する責任を果たさず、京都市住宅供給公社に対して漫然と空家整備費を含む委託料を支出し、京都市に多大な損害をもたらしたのです。
したがって、「市民ウォッチャー・京都」は、不適切な支出をした門川大作京都市長以下の管理者に対して、損害賠償を請求するなどの必要な措置をとることを求め住民監査請求を行いました。
今後、監査結果又は勧告、議会・長その他の執行機関又は職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が監査又は勧告を60日以内に行わないとき、議会・長その他の執行機関又は職員が措置を講じないときには、裁判所に対し、住民監査請求に係る違法な行為又は怠る行為につき、住民訴訟を起こす予定です。
3 京都市に物申す!
一生懸命に仕事をしていて、能力的にも何ら変わりがないのに、自分ではない特定の人だけに仕事が回ってきたらどう思いますか。「何で?」「不公平!」そんな声が聞かれることになると思います。その意味で、京都市住宅供給公社の業務執行は決して適切とはいえません。ただ、市営住宅の管理を京都市住宅供給公社に委託している京都市が、「誰にどのように仕事を頼んでいるの?」「それはよくないことだからやめなさい!」ときちんと監視監督していれば、京都市の市営住宅の空家整備について、特定の業者のみが恩恵を得るという不合理な事態は早めにストップできたはずです。それにもかかわらず、京都市は、きちんと京都市住宅供給公社を監視監督しなかったのです。このような京都市の姿勢を正していくには、京都市の住民一人一人が京都市を監視し、問題がある事柄に対しきちんとNO!と言っていくことが必要です。
先日、特定秘密保護法が成立してしまいました。この法律により、国民の知る権利が大幅に制限されるのではないかと危惧されています。しかし、私たちには、憲法21条で保障されている知る権利があります。現行憲法は、権力が国民を制限するのではなく、国民が権力を制限するという理念に基づいてつくられています(立憲主義)。そして、国民は、国民主権・民主主義の理念に基づいて、権力を監視して、不適切なことが行われた場合に是正することを求めていくことができます。権力を監視し、是正を求めていくためには、まず、権力が保有する情報について「知る」ということが必要です。
みなさんが住民としてよりよい京都市にしたいと思われるのであれば、京都市に対し、情報公開請求をしてみてください。情報公開請求は、個人でも行うことができます。情報公開請求をすることで、いままで知らなかったことがわかるでしょう。そして、京都市がどのように市を運営しているかがわかるでしょう。その情報をもとに京都市を監視し、京都市に対し是正を求めていくことが、私たち住民が住みよい京都市、そして誇ることができる京都市をつくる一歩となるのです。
待っていても何も変わりません。積極的に、「京都市」づくりをしていきましょう!京都市に物申す住民が、京都市を変えるのです!