連載第115回 『ねっとわーく京都』2014年5月号掲載
寺園 敦史(ライター)
政調費は本当に政務調査に使われているのか
2013年12月号本欄「さあ何を語る市議先生 政務調査費の使い途」で、われわれ市民ウォッチャー・京都とともに行政監視活動を続けている「京都・市民・オンブズパースン委員会」(パースン委員会)が現在京都地裁に提起している京都市会議員の政務調査費(政調費。現政務活動費)の違法使用問題について紹介した。京都市議は月40万円(年480万円)の政調費を受け取ることができる。パースン委員会は、政調費の大半を「人件費」と「事務所費(家賃)」に使ったと報告した14議員*らに対し、約2380万円の返還を求めている住民訴訟のレポートである。
パースン委員会は2006年度、07年度にも政調費についての住民監査請求を行い、その結果それぞれ1億3000万円、7100万円が「違法」と認定され、議員側から返還された。これ以降市会は、全領収証の添付を義務づけるなど政調費の報告内容を厳格化した。すると政調費の使途を細かく分類して報告するのでなく、かわって大半を「人件費」と「事務所費(家賃)」に使ったとする議員がにわかに出てきた。制度が厳格化され、透明性が高められたことで、逆にどんな政調活動にいくら使われたか、まったくわからなくなってしまったのである。
裁判の中で原告(パースン委員会)は議員14人の市会本会議での質問内容を分析し、政務調査活動をした形跡がまったく見られないと主張した。これを受け、裁判所は被告(京都市)に対して、議員の具体的な政務調査活動の内容がわかる説明を書面で提出するよう指示した。ここまでが前回本欄での報告である。
*14議員の名前は以下の通り。自民党:加地浩、加藤盛司、繁隆夫、下村あきら、田中セツ子、富きくお、橋村芳和、巻野渡、山本恵一、吉井あきら、高橋泰一朗、田中明秀。民主・都みらい:天方浩之、今枝徳蔵の各議員。
何も語れなかった議員
しかし、京都市は書面提出をずるずると引き延ばし、提出したのは裁判所の指示から8か月も経った2014年2月だった(しかも13人分のみ)。書面は各議員名による「陳述書」が提出されるものと思われたが、出てきたのは市会事務局作成の「調査書」(議員からの聞き取り記録)だった。
その是非はともかくとして、書面の中で議員たちが何を語っているのかは、知りたいところである。だが、期待は裏切られた。13人とも判で押したように「具体的な調査研究活動は、市政に関する市民からの意見の聴取や各種連絡調整、市政報告資料の作成等である」──こればかりだった。
原告あるいは市民に対して説明すべきは、毎月々40万円使ってどんなテーマで市民からどんな意見を聴取し、それを政策提言など市政にどう反映させてきたのかということである。8か月も待たせておいて、本当にがっかりさせられた。結局、彼らには、市民の前に胸を張って説明できる政務調査活動など何もなかったということではないのか。
各議員の事務所はもっぱら政務調査活動にしか使っておらず、政党や後援会活動などに使っていない、働いている職員も政調活動に専念しているなどと回答したのも一律である。議員14人の中には、事務所を政党支部や後援会、あるいは知事選時の選挙事務所にも使用している議員もいるにもかかわらず、にである。政党・後援会活動は事務所ではなく自宅で行っているとも各議員言い張っているそうだが、笑わせる言い分だ。
「こんな調査自体迷惑だ」と開き直ったか!
今回市会事務局が提出した調査書によると、聞き取りに応じた議員から、具体的な違法の証拠が挙がっているわけでもないのに、「なぜこのような報告を求められるのか、という声が少なからずあった」ということだ。前年、前々年に巨額の違法が指摘され返還させられる「前科」を持つものが、当年度、制度をすり抜けるような報告をしておいて、えらく厚かましいことを言うではないか。疑われて心外なら、相手にぐうの音も出ないような説明をすればすむ話であろう。
念のために付け加えておくが、政調費月額40万円というのは議員に対する報酬ではない。あくまでも政務調査活動という限定した使途にのみ認められるものだ。議員には報酬として月額96万円支払われているのだ(ただし現在は10%カットされている)。これとは別に年2回ボーナスも支給されているので(年410万円あまり)、1500万円近い年収が保障されているのである。これだけの税金で養われているのだから、政調費ぐらい真面目に使ってくれといいたい。
14人の議員には、公金の使途について説明責任があること、そして市民からどのような視線を向けられているのかを、少しは謙虚に受け止めてもらいたい。