連載第128回 『ねっとわーく京都』2015年7月号掲載
鈴村 堯(司法書士)
この間、京都市のホームページで会議録検索システムを選択し、私が西京区に住んでいる関係もあって、西京区選出の市会議員の2014年度の議会での発言を読んでみました。各議員の発言内容を整理し、報告書を書こうと思ったのだけど、発言が市政の多岐にわたり、時間的にも能力的にも無理だと悟りました。
そこで今回は、河合ようこ(日本共産党)市会議員の2014年9月26日定例会での発言を取り上げてみます。
請願256号(私立病院院内保育所の運営充実)の教育福祉委員会における不採択に反対する発言。
発言内容を整理させてもらいます。
市立病院院内保育所青いとり保育園(以下、「青いとり」という。)は、私立病院で働く看護師、医師の労働を支え、子供たちの豊かな育ちを保障してきた保育園である。
今回の請願は、保護者の方たちから出されており、内容は次のとおりです。
①市立病院の職員が安心して働けるように園の運営について、保護者や職員の声を反映させて保育水準を一層向上させること。
②保育園の職員が、正規雇用できるような条件整備を行うこと。
③病児、病後児保育も含めた保育園の運営に京都市及び京都市立病院が引き続き責任を負うこと。
至極当然な要求である。
青いとりは、2011年に市立病院が独立行政法人化されるまでは、京都市も関わった運営委員会が運営に責任を持ち、保育所の運営は京都市民間保育所プール制に準じて、職員配置や職員給与が保障されてきた。2011年4月からは、病院が、株式会社ピジョンハーツに運営を委託し、職員の雇用は園長も含めた全員が非常勤の1年契約、給与は3割カット、4年間有期雇用とされました。
雇用不安定になり、先の見通しが持てず5人の職員が辞めていった。
命の現場で働く看護師や医師の子供たちを保育する院内保育所では、保護者の仕事への理解と柔軟な対応が求められます。
だからこそ職員が集団的に保育が積み上げられるよう、仕事を辞めずに働き続けられる雇用の安定が欠かせません。
院内保育所の現状について、有期雇用になって職員が辞めて行っても「支障がないと病院から聞いている」、「問題は起こっていない」と局は答弁しているが、実際に子供を預けている保護者からの意見聴取はされていない。
請願とともに寄せられた保護者の声には、「ゼロ歳児の娘が、目をキラキラさせて登園しています。先生方も安心してお任せできる方で青いとりに通わせてよかったとおもいます」、「働く母を本当に手助けして下さっていることに感謝です、安心して預けられるので仕事もがんばれます」と書かれています。
株式会社に委託され、処遇が悪くなったもとでも、子供の育ちを保障しよう、保護者が安心して医療現場で働けるようにという保育園の職員の頑張りがあったからではないでしょうか。
けれども、善意と頑張りだけで保育の質を守り続けるのは困難です。
看護師、医師確保が喫緊の課題となっているもとで、院内保育所の役割はますます大きくなっています。また、保育士不足も全国的な課題となっており、保育士の処遇の安定が本当に重要です。
職員さんの頑張りや院内保育所の役割を実感してこられた保護者の方が今回の請願で声を上げられました。この声を聴くべきです。
今年度末(2015年3月31日)でピジョンハーツとの4年間の契約期間が終了します。
今後の院内保育所の運営や職員の雇用がどうなるかは、子供の保育、子供を預けている看護師や医師が安心して働けるかどうかに関わってきます。
そしてそれは、私立病院の患者さんや市民の命と健康守ることと直結しているといっても過言ではありません。その役割を果たしている院内保育所について、京都市と市立病院が責任を負うべきである。
以上の理由により、本請願は採択すべきである。
河合議員の発言にもかかわらず、本請願は、起立多数で不採択となった。
河合議員は、保育士出身。本発言には、子供大好きな河合さんの保育現場で誇りを持って働く職員の皆さんとそれを支える保護者の方たちに対する熱い思いが伝わってきます。
京都市政が誰のために何のためにあるのかを考えさせてくれる貴重な発言でした。