最低賃金審議会の公開を求めましょう!


連載第146回 『ねっとわーく京都』2017年3月号掲載

中村 和雄(弁護士)

京都の最低賃金は831円

2016年の地域別最低賃金額が確定しました。1時間あたり全国加重平均で813円,京都府は831円です。時給831円以下で働いているみなさん、きちんと使用者に請求しましょう。また、残業には2割5分以上の割増賃金がつくことも忘れないでください。

わが国の最低賃金は、依然として先進諸外国と比較しても低い水準です。フランスは9・67ユーロ、イギリスは6・7ポンド、ドイツは8・5ユーロです。

わが国の最低賃金が憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む」水準に達しているとは到底言えません。2016年全国加重平均813円で週40時間働いた(月間173・8時間)としても月額賃金は14万1307円です。

厚生労働省「毎月勤労統計調査」事業所規模5人以上の平成27年平均月間総実労働時間144・5時間では11万7478円です。ここから所得税や社会保険料が控除されます。そこから毎月の食費だけではなく住居費をはじめとする生活費を支払うのです。非正規労働者の増大・格差と貧困の拡大の中で、最低賃金の大幅引き上げは、労働者の生活を維持していくための重要な課題です。

東京と宮崎・沖縄では218円の差

最低賃金の地域間格差が大きいことも問題です。2016年の最低賃金時間額の分布は東京都の932円と宮崎県・沖縄県の714円とでは実に218円もの格差が生じています。しかも地域間格差は毎年拡大しています。地域経済の活性化のためにも,地域間格差の縮小は喫緊の課題です。

地域別最低賃金の地域間格差が増大することに伴い、賃金全体の地域間格差が増大しています。こうした中で、若年労働者を中心として賃金の低い地方から賃金の高い地方への労働力の流動が加速しています。賃金の低い地方では企業の人手不足が深刻化しており、地域の高齢化・過疎化が拡大し、地域経済の活力が疲弊しています。

最低賃金の地域間格差が拡大し続けている大きな原因は、現在の最低賃金審議会の決定方式にあります。中央最低賃金審議会は全国の都道府県をA?Dの4グループに地域分けをして、各グループごとの引き上げ目安金額を4段階で決定しているのです。その結果、毎年地域間格差は広がっているのです。京都府はB地域に指定されています。2016年答申では、

A地域は25円の引き上げ、
B地域は24円の引き上げ、
C地域は22円の引き上げ、
D地域は21円の引き上げが目安金額とされました。

最終的には、各地域の最低賃金審議会が決定するのですが、中央最低賃金審議会の目安額に大きく拘束されているのが実態です。運用の見直しが必要です。

審議会の全面公開を求めましょう

現在の最低賃金法は、地域別最低賃金額の決定考慮要素として、「地域の労働者の生計費」、「賃金」、「通常の事業の賃金支払能力」を掲げています。事業の支払能力を考慮要素とすることは問題であり国際的に見ても異常なのですが、少なくともこれらの要素について、最低賃金審議会できちんと客観的な資料に基づいた検討がなされる必要があります。

しかし、審議会の中でどのような検討がなされているのかを知ることができないのです。わが国では審議状況の公開がきわめて不十分です。全労連・国民春闘共闘委員会の調査によれば、専門部会の審議をきちんと公開しているのは鳥取だけです。鳥取では審議状況を全面公開していても何ら問題は発生していません。京都は、本審議会は基本的に公開されているものの、実質審議を行う専門部会は全面的に非公開です。また、最低賃金審議会の委員は、公・労・使の三者構成ですが、労働側委員はすべて「連合」推薦の委員で独占されています。

最低賃金審議会について、民主主義の大前提である「公開」を求めていきましょう。