木津川市による違法な土地購入を問う裁判が始まりました!


連載第152回 『ねっとわーく京都』2017年10月号掲載

諸富 健(弁護士)

1 木津川市による土地購入

JR木津駅の南東に約4万6千㎡の山林があります。2016年12月26日、木津川市はこの山林を所有していたUR(独立行政法人都市再生機構)から約9350万円で購入しました。しかし、この土地購入には様々な問題があります。

2 不明確な購入目的

そもそも、地方公共団体が公金を支出する場合、その目的を達成するための必要最小限度に抑えなければなりません。ところが、市は購入直前の2016年9月議会で購入目的を問われ、「有効利活用の時期は現時点ではっきり何年先とはまだいえない状況」「行政目的をしっかりこれから時間をかけて確定していく」と述べました。

つまり、目的がはっきりとせず、いつ有効利活用できるか分からないような状況で本件土地を購入したのです。このように不明確な目的しかない土地購入が違法であることは明白です。

3 URによる脅しとも言うべき圧力

では、なぜ木津川市は、いつ活用できるかも分からない土地を購入することになったのでしょうか。その背景にはURの姿勢があります。

URは、2015年12月頃、本件土地を他の業者に売却する方針を打ち出し、市に協議を求めてきました。

市は、小川流域内水排除対策後に改めて協議したいと回答しましたが、URは2018年までに住宅用地を処分完了する、開発中止やスケジュールの延期はできない、先着順方式で優先協議者を決める、それが決まらなければ「投げ売り」になる、その場合、事業者の規模・レベル等についての保証はできないなどとほとんど脅しに近い報告をしました。

結局、市はこうしたURによる脅しに屈する形で土地購入に踏み切ったのです。このような外部の圧力による公金支出が許されてよいはずがありません。

4 不適正な購入価格

さらに、本件土地は、開発困難地とされている斜面地で、仮に将来開発するとしても大規模な排水設備を要します。しかし、本件土地の価格は、こうした将来の排水設備の負担額を全く考慮せずに決定されました。

したがって、本件土地は異常に不適正な価格で購入されたものであって、違法性を免れません。

5 監査決定でも疑問噴出

こうした違法な土地購入に対して、木津川市の住民有志が住民監査請求を行いましたが、結論は棄却でした。

もっとも、この決定においても、「すぐさま本件の土地を取得する必要があったものとは言い難い」と述べられ、さらに「今後は、市が土地等の財産を取得する場合は、あらかじめ市の財政負担を勘案することが原則であることを認識して事業を進められたい」「今後、新たに土地等の財産を取得する場合においては、…庁内や相手方との協議・交渉内容は可能な限り記録し保存されたい」「今後、種々の事業を進めるにあたっては、…本件のように監査請求人らが感じた事務執行に対する不信感を、多くの市民が抱かぬよう事業の目的や理由等については十分検討し、市民に対して適宜、適切な説明と情報公開に努められたい」などと、多くの問題点が指摘されています。

6 闘いの舞台は住民訴訟へ

当然、住民は納得できず、京都地方裁判所に住民訴訟を提起しました。原告は11名です。その第1回期日が本年8月17日に行われ、原告の代表者と奥村弁護士が意見陳述を行いました。傍聴にも多くの住民が参加し、期日後の報告集会では本件土地購入のおかしさを改めて共有する場となりました。

長い闘いとなることが予想されますが、税金の使い方や情報公開の在り方など、自治体行政の根本が問われる重要な訴訟ですので、是非関心を持っていただきますようお願いします。